夫を電車に乗せて消えた妻が抱えていた「症状」 その日はあまりに突然やってきた

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一方、女性は、自分がどんな症状で困っているのか、パートナーや家族にどんな対応をしてほしいのか、なるべく冷静に伝えられるといいと思います。症状がつらく、日常生活に支障を来すようであれば、更年期障害といって、治療が必要なケースもあります。忙しい女性は体調が悪くても、自分のことを後回しにしがちですが、我慢したり悩んだりしているよりも早めに受診したほうが、心身ともにラクになれます。

受診の際は、婦人科でも対応はできると思いますが、できれば更年期の専門外来をお勧めします。当クリニックの女性更年期外来には、地方からの患者さんも多く受診されています。その中には、地元の婦人科を受診したところ、「そういう年なんだから、仕方がないよ」とけんもほろろに言われた人や、何の検査もすることなく、いきなりホルモン剤を処方されて不安になったという人もいます。

深刻な場合は専門医に受診を

更年期の専門外来では、問診や必要な検査をしたうえで、その人の症状や体質に合った治療法を選択します。例えば、不足している女性ホルモンを補うホルモン補充療法をはじめ、胎盤から抽出された有効成分を用いるプラセンタ療法、漢方薬やサプリメント、ハーブといった選択肢もあります。治療はもちろんですが、受診してつらい症状を話しただけで、不安が軽減したという人もいます。

更年期の症状は、一生続くわけではありません。閉経から4~5年ほど経つと、落ち着いてくる人が多いようです。ただ、そのころになってくると、骨粗しょう症や高脂血症といった病気のリスクも高まってくるので、定期的に受診しておくといいでしょう。

更年期の症状は男性にもありますが、もともとの男性ホルモン値の個人差が大きく、男性の場合は閉経といったイベントがあるわけではないので、女性のように誰しも経験するものではないようです。

それでも、更年期は女性にとっても男性にとっても、今の自分やパートナー、家族との関係を見つめ直すのにいい機会です。この時期に互いを思いやり、気遣いのあるコミュニケーションが取れるようになれば、その後の人生も前向きに過ごしていけるはずです。心身の不調や不安は一人で抱え込まずに、パートナーや家族、専門家の助けを借りながら、上手に乗り切ってほしいと思います。

浜中 聡子 Dクリニック東京 ウィメンズ院長

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はまなか さとこ / Satoko Hamanaka

医学博士。北里大学大学院医学部卒業。女性のためには「前向きに年齢を重ねていくこと」の重要性を感じ、日本抗加齢医学会専門医、国際アンチエイジング医学会(WOSAAM)専門医、米国抗加齢医学会(A4M)専門医、米国先端医療学会(ACAM)などの資格を多数取得。精神と身体の両面からケアすることを得意としながら、「ウェルエイジング」を提唱し臨床現場に立っている。著書に『美人増髪計画』『アフター更年期からの不調を治す50の習慣』など。

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