夫を電車に乗せて消えた妻が抱えていた「症状」 その日はあまりに突然やってきた
私が勤めるクリニックには「女性更年期外来」があり、40代から50代を中心に、心身にさまざまな不調を抱える多くの女性が受診されています。女性更年期外来を訪れる患者さんたちが最もよく口にするのが、「このつらさを誰もわかってくれない」という言葉です。その言葉からは、「わかってほしい」という切実な思いが伝わってきます。
一方、男性からは、「更年期の妻とどう接したらいいのかわからない」という声がよく聞かれます。突然キレて怒り出したかと思えば、激しく泣き出す。「ヒステリーを起こしている間は、黙ってやり過ごすしかない。でも、黙っていても文句を言われるし、更年期っていうのは本当に厄介ですね」。そんなふうにおっしゃる男性もいます。
電車で別れたまま戻ってこなかった妻
50代の男性Aさんの場合は、妻の更年期の言動に悩むことはなかったものの、ある日突然、何の前触れもなく、妻との別れの日を迎えました。Aさんによれば、ある休日に妻と買い物に行き、帰りの混雑した駅で急行に飛び乗った際、妻が乗り遅れてしまいました。当然、後から追いかけてくれるものと思い、Aさんはそのまま自宅に戻り、妻が帰ってくるのを待っていたのですが、妻が戻ってくることはありませんでした。
Aさんはいわゆる亭主関白で、若い頃から家事も育児も専業主婦の妻任せ。しかも、浮気もしていました。Aさんは妻にはバレていないと思っていたそうですが、妻は気づいていたんですね。いつか家を出るときのために少しずつお金を貯めて準備をし、ついに「家出」を決行したのでした。
妻は更年期を迎えて心身の不調を感じることがあったようですが、Aさんに頼ることはとっくに諦めていたのでしょう。Aさんからしてみれば、とくに不仲だったわけでもなく、不自由することなく生活もできていて、どうして妻が家を出ることになったのか、理解できなかったかもしれません。でも、このように、更年期までに少しずつ積み重なった不協和が、熟年別居や離婚につながるケースは決して少なくないのです。
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