『金融危機後の世界』を書いたジャック・アタリ氏(経済学者・思想家・作家)に聞く
前著『21世紀の歴史』で「サブプライム破綻」「世界金融危機」を予見し、世界がその発言を注目。金融危機後の世界を見通した本書をベースに日本へのアドバイスを中心に聞いた。
--ドル安が懸念されています。
ドルが暴落したからといって利益になる人はほとんどいない。ドルが暴落すると世界的なカタストロフィー(大災害)を招く。日本もドル安(円高)で苦しんでいる。ドルは安すぎる。とはいえ、今日、客観的な状況においては、確かにアメリカ経済は弱体化している。これからさらに弱体化するだろう。金融危機がまだ終わっていないからだ。
今後数カ月のうちに、金融危機は終わっていないと、多くの人が理解するだろう。経済危機にいたってはとても終わったとはいえない。大借金を抱えつつ、均衡をなんとか取り戻そうとしても、たとえばアメリカは経済成長率がかつての水準に戻るには長い時間が必要だ。2007年の生産性を取り戻すには12年までかかるとみられ、水準として生産高が回復するのは15年まで待たねばならない。
ドルは今後も唯一の基軸通貨ではあるが、いまの制度のままでは為替レートの高下は避けられない。
--替わる基軸通貨がないと。
世界経済の安定のためには、変化が必要だ。世界的な単一通貨制度のようなものに向かっていかなければならない。