『金融危機後の世界』を書いたジャック・アタリ氏(経済学者・思想家・作家)に聞く

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 生産性の調和化のために、欧州の場合、工程表をつくった。通貨それぞれのバックグラウンドの差異を極力潰した。そうすることで単一通貨地域をつくることができた。しかしそれには20年かかり、かつ絶えず政治的に強い意思を示した。こうした政治的な意思ができなければ、これはできない。それは戦争の悪夢を消滅させるためだった。アジアで共通通貨をつくるには、中国、韓国、日本にそうした政治的意思がまず必要になってくる。

--大幅な財政赤字によるハイパーインフレの可能性はない?

日本が実例をはっきり示している。日本の場合、巨額な公的債務があるのにインフレにならない。おカネが銀行から出ていかないからだ。銀行から出ないなら、フローのインフレにはならない。ただ、ストックのインフレは存在する。それがバブルと呼ばれる。たとえば不動産のインフレであったり、株価のインフレであったりする。あるのは資産のインフレだ。いまのところ、同じような形でジャガイモやクルマの価格が決まることはない。

将来、銀行から巨額のおカネが出ていくと、ハイパーインフレが起こるだろう。その際、利点が一つある。それはいままでの債務が解消されることだ。そして、政府におカネを貸し付けていた人々を破産させる。これは悲劇的な解決策となる。

実例は1930年代にドイツで起こった。結果、ヒトラー政権が生まれた。「絶対的な悪夢」は、世界的なレベルにおいてワイマール帝国のようなものができることだ。それを避けるためにも、金融を安定化させる制度づくりをしなければならない。

--成長の必須4要件として、資本、人口、技術、資源を挙げています。日本は人口減が必至ですが。

フランスは特殊なケースかもしれないが、人口を保っている。人口が減るのは、いまを楽しくという享楽主義に走ったためというのが一つの説明になる。この享楽的な考え方はまったく自殺的なイデオロギーといっていい。

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