楽天に怒り爆発、「送料改革」に出店者が反旗 公取委もプラットフォーマーの動きを注視
楽天は出店者向けの戦略共有会や全国各地で行うタウンミーティングで、ワンタリフ構想の意図や見込まれる効果について説明を行ってきた。ここで出された出店者の意見も踏まえ、10月31日には一部方針を転換。配送先が沖縄や離島の注文については、送料無料ラインとなる購入金額を9800円とする旨を出店者に通知した。なお、こうした例外を設けつつも、送料無料ライン統一への規約改定は2020年3月中の実現を目指すという。
楽天ユニオンの顧問弁護士を務める早稲田リーガルコモンズ法律事務所の川上資人弁護士は、楽天の送料無料ライン統一施策が、独占禁止法が禁止する優越的地位の濫用に当たる可能性があると指摘する。「楽天がすべて送料を負担するというなら別だが、そうでなければ一方的かつ店舗側に不利益な規約改定であり、極めて悪質」(川上氏)。
この点について楽天は「当社が実施する各施策については、施策はさまざまな観点から検討を行い、法令遵守に努めている」(広報)と回答した。
消費者にとっては歓迎すべき施策のように思われる「送料無料」だが、そうとも限らない。「楽天だけの問題ではないが、同社の送料無料という方向への誘導はEC市場全体に大きな影響力を持つ。 長い目で見て、本当に消費者のためになるのか?という疑問はある」。個人・法人からECのトラブル相談を受け付け、EC事業者の運営に役立つ情報共有などを行っている一般社団法人ECネットワークの沢田登志子理事はそう懸念を示す。
「送料無料が当たり前=送料無料でなければ買わない 、という消費者が増えると、『送料をご負担いただいたうえで価値のある商品を提供する』という商売が成り立ちにくくなる。価格競争、ポイント合戦に加え、送料負担で疲弊し、特徴のある商品を扱っている中小零細の店舗がEC市場から消えてしまう。結果的に消費者の選択肢が 狭まってしまうのではないか、という危惧がある」(沢田氏)。
過熱するプラットフォーマー間の競争
もちろん、これは楽天1社に限った問題ではない。ECにおけるデジタルプラットフォーマー間の競争は熾烈を極めている(『週刊東洋経済』11月9日号(5日発売)で詳報)。アメリカのアマゾンが日本でも勢力を増すのに加え、Zホールディングス(旧ヤフー)がファッションECのZOZOを買収するなどさまざまな挽回策を講じる。
アマゾンと双璧を成す楽天も、前述の「ワンタリフ」「ワンデリバリー」などの構想を実現することで、他モールに利用者を奪われまいと奮闘する。東洋経済のインタビューに、楽天・コマースカンパニーロジスティクス事業の小森紀昭ヴァイスプレジデントは「本当の日常遣いに適した形に進化しなければ、今後の楽天市場の成長はない」と語っている。
こうした競争を経て、EC市場における影響力は数社の巨大プラットフォーマーに集約されてきた。競合を意識するあまり、出店者に対し優越的地位の濫用に当たるような施策の強行は増えているとみられる。
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