「DeNA筒香嘉智」メジャー挑戦表明の大きな意味 ポスティングで、MLB球団と交渉する見通し

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ただ、MLBはここ数年、いわゆる「フライボール革命」によって、多くの打者がホームランになりやすい一定の角度に速い打球を打ち上げるようになっている。本塁打の増加に伴い、三振数も増加しているが、それでも本塁打を打つ打者のほうがよいという評価になってきている。

2018年にMLBに挑戦した大谷翔平は、NPB出身選手の中では極めて珍しいことに数字をアップさせている。

大谷翔平
NPB通算48本塁打 年平均9.6本 本塁打率21.56
MLB通算40本塁打 年平均20.0本 本塁打率17.75

彼はアメリカに来て「フライボール革命」に適応して「進化した」ということができよう。

筒香の進化にも期待

筒香は打撃技術については求道者のように研究を重ねてきた。会見では「筒香選手は結果を残していても毎年のようにフォームを変えているが、それは速いボールに対応するためにスイングを変えていたのか?」という質問に対し、「フォームが変わるのは僕自身進化したいという思いがあったからです」と答えた。

そして「正直、試合に入ってみないとわからない部分が多いと思います。いろいろ想定して、いろんな準備をして、自分の引き出しの中で柔軟に対応したいと思います」と決意を語った。

筒香にもさらなる「進化」を期待したいところだ。

③ 「日本野球のオピニオンリーダー」がアメリカに移籍する意味

筒香は毎年オフになると、日本の少年野球の行きすぎた「勝利至上主義」に警鐘を鳴らし、日本野球界は「子どもの未来」のために、勇気を持って変わるべきだ、と訴えてきた。

さまざまなしがらみがある中で、現役選手、それも屈指のスター選手が、こうした発言をすることは、並大抵のことではない。

2019年1月、大阪府内で少年野球の指導をする筒香選手(筆者撮影)

筆者は、前を向いて、一つひとつかみしめるように話す筒香の姿を何度も目の当たりにして、感動を禁じえなかった。

彼の発言は、ともすれば国内の価値観にとらわれ、伝統重視に傾きがちな日本野球に改革の気運をもたらすうえで大きな役割を果たした。

そして「野球離れ」に歯止めをかけようと奮闘する指導者や関係者に大きな勇気を与えた。

筆者はDeNAの野球普及担当者が「うちの筒香が、あれだけのことを言っているのだから、自分たちも恥ずかしいことはできない」と話すのを聞いた。

筒香は、2015年オフにメジャーリーガーも多数参戦するドミニカ共和国のウィンターリーグに参加した。この「武者修行」で筒香は己の実力を思い知るとともに、MLB流の野球のスタイル、さらにはドミニカ共和国の少年野球の育成システムなどを学んだ。

このドミニカ共和国参戦を機に、筒香は打撃開眼するとともに野球に対する広い視野と高い意識を持つに至ったのだ。筒香のあとからDeNAでは横浜高校の後輩の乙坂智などの選手が、冬季ウィンターリーグに参戦している。こういう面でも筒香は先駆者的な役割を果たしている。

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