アカデミー賞候補!短編映画『八人目の侍』が誕生するまで《ハリウッド・フィルムスクール研修記7》
通常、ビジネスを優先して判断するエージェント(俳優の代理人)は、彼らのクライアントである俳優たちにおカネにならない学生映画に取り組ませることを好みません。
ただし、主演の尾崎氏が『8TH…』への出演についてエージェントに相談した時に返ってきた返事は、「AFI の卒業製作なら(おカネにならなくても)やる価値があるわ!」という快諾だったとのこと。上位フィルムスクールの作品にはそれだけのクオリティがあると認識されているのです。
また、アメリカの俳優組合では役者の最低出演料を定めています。組合所属の役者が、エキストラ等でなく「役」で出演する場合、雇用主は最低でも800ドル前後の日給を払うことが義務づけられています。ですが、AFIでは俳優組合と独自に協定を結び、ギャラを払わずとも質のいい組合員のプロの俳優たちを起用できるシステムを確立しています。
「日本では芸能事務所がプロの所属俳優を、ギャラも出せない学生映画に送り出すことなどまずないでしょう。そういう産学連動のシステム・構造が存在しない。アメリカの業界がどれだけ教育機関の向上に真剣に取り組んでいるかがわかる好例」と尾崎氏は感想を語ってくれました。
産学連動のパイプを築き、業界からの期待を裏切らないためにも常に作品のクオリティチェックをする。これもフィルムスクールが果たす役割です。
■尾崎英二郎氏(左)とジャスティン・アンブロシーノ監督(右)
ショートフィルムがメジャーへの登竜門
日本の映画製作者にとっては、ショートフィルムを製作しても、それが次のキャリアにつながることはまれです。一方、常に新しい才能が求められているアメリカでは、良いショートフィルムを作れば、そこから仕事をオファーされるチャンスがあります。このチャンスもお膳立てするのも、フィルムスクールの機能の1つ。