アカデミー賞候補!短編映画『八人目の侍』が誕生するまで《ハリウッド・フィルムスクール研修記7》
余談になりますが、アメリカ人の教師は本当にほめ上手です。ポジティブシンキングでなければやっていけないベンチャー起業家や映画プロデューサーが、この国から生まれてくるのもうなずけます。
指導教員からは、特に私に不可欠な語学面でのアドバイスから、内容に関する具体的な提案まで事細かに赤ペンを入れてもらえます。
例えば、私はストーリーの中で、戦場における日系人とアメリカ人の対立に関するエピソードを入れていましたが、「両者の対立をもっと押し出すには、さらに強烈なエピソードをもう1つ加えたほうがよい。日系人が食べるビーフシチューの中に、アメリカ人兵士が泥を仕込む、というのはどうか?」と具体的なアイデアまでもらいました。
そして脚本提出後、AFIの学生にとっては運命の「結果発表」の日がやってきます。残念ながら私の作品はRedlight(赤信号=不採用)。提出した全員が自分の書いた脚本を映画化したいわけで、怒鳴り散らす生徒や、意気消沈している生徒が多く見られました。
メンターシップと仮想“スタジオ・システム”
ただし、がっかりしている余裕はありません。結果発表の直後から、採用になった25本の執筆者を中心に、チームを組み、続いてディベロップメント(企画開発)が始まります。
元のアイデアとなる脚本はあるとは言え、実際に映画として作るためには予算・スケジュール面での検証や、ストーリーやキャラクターの詳細を詰めていかなくてはなりません。
このプロセスの中で、重要な役割を果たすのがメンター(指導者)制度。AFIでは1本の作品につき、クリエーティブ面と製作面をアドバイスする2人のメンターがつきます。