アカデミー賞候補!短編映画『八人目の侍』が誕生するまで《ハリウッド・フィルムスクール研修記7》
「神聖ともいえる作品を題材にするのは“いかがなものかな”と思いながらも見始めると、その力量に驚かされた。(中略)この作品を見て思ったことは、AFIはどのような役割を果たしたのかということだ。それは、どのように映画製作を教えているかということでもある。なぜかといえば、日本で学生の作ったショートフィルムを見て、このような印象を受けたことがないからだ。」
今回はこの問いに対して、私自身の経験と、『8TH…』の監督・主演俳優からのコメントも交えながら、答えてみたいと思います。
“青信号”は25/150
以前にもご紹介したとおり、AFIでは1年目に3本のショートフィルム製作を行います。その経験を基に、2年目に取り組むのが「卒業製作プロジェクト」。1年目の作品が35万円程度の予算で作られるのに対し、卒業製作は300万~600万円程度。学生たちにとって、2年間の集大成と言えます。
映画製作は常に「脚本」からのスタートです。学校に対して、脚本学科だけでなく監督・プロデューサー学科の生徒が脚本を提出し、その中から約25本にGreenlight(青信号=企画採用)が出されます。提出される数は、合計で約150本。1人の提出数に制限はないため、脚本学科の中には1人で10本近く提出する生徒もいます。
脚本の専門教育を受けていない監督学科とプロデューサー学科の生徒に対しては、1年次後半の半年間、脚本執筆のクラスが開講されます。その中で、プロの脚本家の指導を受けながら20ページ程度の脚本(1ページが映画の約1分に相当)を書き上げます。
ちなみに私は、ロサンゼルスに来てから興味を持った、第2次世界大戦中の「日系アメリカ人兵士」に関するストーリーを執筆。実際にあった感動的なエピソードを基に書いたこともあり、『スター・トレック』シリーズの脚本家だった指導教員から「『プライベート・ライアン』を超える感動作だ」との大絶賛を受けました。