「女王」の跡継ぎはなぜチャールズ「皇太子」か 王国なのになぜ皇太子なのか歴史家が考察
日本人はなぜか、イギリス王室が大好きである。かつての「ダイアナ・フィーバー」しかり、最近では昨年5月のハリー王子の結婚式しかり。いずれも国をあげての大騒ぎとなった。
筆者はその点、へそ曲がりである。「ダイアナ・フィーバー」の時も、ハリー王子の結婚式のときも何とも思わなかった。ただ歴史家として、かねてから気になっていたことはある。ダイアナ元妃の元夫にして、ウィリアム王子とハリー王子の父親たるチャールズ皇太子である。
気になるのは、チャールズご本人ではなくその「皇太子」という称号のほうであり、彼を「皇太子」と称する風習である。イギリス・エリザベス女「王」の後嗣が「皇」太子では、やはりおかしい。なお、本稿の主旨の都合上、一部敬称を省略する。
英語では何と言う?
英語では一般的に、君主の跡継ぎのことをクラウン・プリンス(crown prince)という。日本でクラウン・プリンスとよばれるのが、天皇の継嗣たる「皇太子」であるのは言うまでもない。立場は日本の皇太子と等しいのだから、日本語は同じ称号で呼べばよい。そういう論理も成り立つ。
それでも筆者がことさらあげつらうのは、東アジア・中国など漢語圏の歴史を専門にしていて、漢字の表記にいささか敏感だからなのだろう。「王」と「皇」「帝」との区別をつけないのは、どうしても見過ごせない。皇太子というなら、あくまで皇帝の後嗣である。
そのおかしなことがどうやら、普通には奇妙と感じられない。なぜそうなってしまうのか。そこにむしろ、無限の関心を覚える。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら