「女王」の跡継ぎはなぜチャールズ「皇太子」か 王国なのになぜ皇太子なのか歴史家が考察

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

原作は、アンデルセンが1837年に発表した童話“Kejserens nye klæder”である。デンマーク語の原題をドイツ語にすれば“Des Kaisers neue Kleider”、英語なら“The Emperor’s New Clothes”となる。「皇帝の新しい服」という意味である。「裸の王様」は「王」さまではなかった。「皇帝」なのであって、その称呼は「カイゼル」だからカエサル、ローマ皇帝に由来する。

ポイントを2つ、挙げておこう。第1に、「王」と「皇帝」の互換と無差別が、ここでも確認できることであり、それはまず日本語・日本史、そしてまた現代の日本人の問題にほかならない。

しかも日本だけにはとどまらないだろう。「王」にしても「皇帝」にしても元来、外来語だったからである。それならオリジナルの語彙・語義を提供した漢語・中国史の問題でもある。そこから考えなくてはならない。

もう1点のポイントは…

いま1つは、「王」「皇帝」とは漢語でありながら、このようにしばしば西洋、ヨーロッパの事物を指す。われわれは西洋の事物を日本語・漢語で考えるのが通例であり、「英国」「米国」など、国名ですらその例外でない。

西洋がそれだけ、われわれ現代人の血肉になっているということでもあるし、横文字を翻訳した概念が定着して久しいということでもある。

『君主号の世界史』(新潮新書)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

『裸の王様』もその一典型であって、オリジナルの横文字を意識すらしない。それほどに、西洋と日本語・漢語は密接な関わりにある。それもチャールズ「皇太子」とつながる問題にほかならない。

それなら、なぜそうした現状になっているのか。どこでどのように、漢語と横文字が結びついたのか。それを考えることがチャールズ「皇太子」の怪を解きほぐすゆえんでもあろう。

漢語といえば、東アジアの「リンガ・フランカ(国際語)」であり、翻訳といえば、ローマにはじまる西洋の概念に対するものである。この東西2つを大きな柱に、新刊の『君主号の世界史』で、多様な君主とその称号の歴史をたどってみた。チャールズ「皇太子」のみならず、世界史そのものの見直しができるかもしれない。

岡本 隆司 京都府立大学文学部教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おかもと・たかし / Takashi Okamoto

1965年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。『属国と自主のあいだ』『明代とは何か』『近代中国と海関』(共に名古屋大学出版会)、『世界史とつなげて学ぶ中国全史』『中国史とつなげて学ぶ日本全史』(共に東洋経済新報社)など著書多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事