福原愛が中国人のハートをつかめた理由 トップアスリートはグローバル社会の架け橋

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特に面白かったのが、ロンドンオリンピックの女子卓球個人戦準々決勝で世界ランク1位の丁寧(ディンニン)選手にストレート負けを喫した直後、中国人記者から慰めの言葉を掛けられたときのこと。「試合中はみんなで丁寧を応援していたくせに、終わってから私のところに慰めに来るなんて、意味わかんないわよ!」と切り返した様子が中継され、中国人の間で「なんてかわいいんだ!」と話題になりました。

福原選手は、自身の話す中国語について、中国人選手やコーチとの交流の中で自然に身に付いたものと言っていますが、努力なしには絶対に到達できないレベルだと思います。そう言えば、石川佳純選手も中国での試合後、きれいな中国語でインタビューに応じていました。福原選手ほどではありませんが、堂々とした応対で、中国人インタビュアーも客席に向かって「石川選手の中国語はうまいでしょう?」とあおっていました。

グローバル化するスポーツの世界

今年1月、ACミランへの移籍を果たした本田圭佑選手が、入団記者会見を英語で行ったのもたいへん印象的でした。「サムライ・スピリットとは?」と聞かれて「侍には会ったことがない」と切り返したウイットも見事でした。サッカー選手には、先駆者の中田英寿をはじめ、高原、長谷部、川島、長友など、英語、イタリア語、ドイツ語などでインタビューに応じる人がたくさんいます。

また、ゴルフの宮里藍選手がアメリカのメディアに対してしゃべる英語も高レベルです。あれくらいできれば、アメリカのファンにも自然に受け入れてもらえると思います。先述の李娜や姚明も、海外でのインタビューは流暢な英語でこなします。

一方、野球では、メジャーリーグで活躍する日本人は大勢いますが、エンゼルスとマリナーズで活躍した長谷川滋利などを除いて、直接、英語でファンに語りかける選手がいないのが残念です。

企業のコミュニケーションもアスリートをお手本に

いつの時代も、スポーツ界のスターに期待されるのは、超人的なプレーで見る者をインスパイアすることですが、有名な選手であればあるほど、アスリートの枠を超えたロールモデルとしての役割も求められます。特に、グローバルに活躍する選手たちは、その人間性とコミュニケーションパワーを発揮して、母国とグローバルをつなぐ懸け橋となってくれる貴重な人材です。 

グローバルに事業展開する企業にも同様の責務があります。よい製品やサービスを提供することはもちろん、人間味あふれる存在として地域の人々と交流し、相互理解を深めるべきです。中国14億人とのコミュニケーションを、福原愛選手ひとりに任せておくわけにはいきません。

岡崎 茂生 フロンテッジ ソリューション本部副本部長

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おかざき しげお / Shigeo Okazaki

1981年東京大学教育学部卒業、1989年ピッツバーグ大学経営大学院MBA。1982年電通入社、2006年より北京駐在。北京電通 ブランド・クリエーション・センター本部長を経て、現職。30年におよぶ広告・マーケティング領域での経験をベースに、中国企業をはじめタイ、アメリカ、韓国、日本企業などを対象に幅広くブランド戦略コンサルティングを行なう。アジア各国およびアメリカの大学/大学院でのブランド講座・公開セミナー、フォーラムでのスピーチ、雑誌連載など多数。チュラロンコン大学商学部マーケティング学科客員准教授、南京大学ジャーナリズム&コミュニケーション学院客員教授、湖南大学ジャーナリズム・コミュニケーション&映像芸術学院客員教授。

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