福原愛が中国人のハートをつかめた理由 トップアスリートはグローバル社会の架け橋

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彼女がここに至るまでの道のりは、コート上の対戦相手に加えて、国家ステートアマ制度やメディアや観客を相手にした戦いの歴史でした。湖北省武漢出身で今月32歳になる李娜選手は、2009年1月、彭帥(ポンシュアイ)、鄭潔(ジェンジー)らの有力選手と共に国家管理下を飛び出してフリーの立場で世界を転戦することを決意し、当初は反逆児扱いされました。しかし、同年全米オープンで8強入りするなど、中国人のメンツを立てる結果を出して周囲を黙らせていきます。

グローバル志向が強い彼女は、愛国的な中国メディアともよく衝突します。2011年の全仏優勝インタビューでは、スポンサーとスタッフへの感謝のみで、決まり文句である「感謝中国」の言葉がなかったとして批判されました。2013年5月、全仏オープン2回戦で早々と敗退した際の記者会見では、中国新華社の記者から「応援していた中国のファンにメッセージを」と言われてキレた彼女、「負けたから、ひざまずいて謝れってこと?」と気色ばみました。

また、たしか2010年の中国オープンでの試合だったと思うのですが、中国に凱旋した李娜選手を応援する中国人観客のマナーがなっていないと、コート上から客席に向かって英語で注意をしたシーンを覚えています。

李娜のもっと上を行くのが、水泳飛び込み競技の女王として君臨した、郭晶晶(グオジンジン)。正確無比の美しいフォームで、シドニー・オリンピックで銀2個、アテネで金2個、北京で金2個を獲得したスーパースターです。圧倒的な実力と女優並みの美貌で知られる郭晶晶は格好の取材対象ですが、メディアの前ではいつも気まぐれで不機嫌です。極め付きは、2008年2月の世界選手権でのインタビュー。「北京オリンピックでライバルとなる選手は?」と聞かれた際に「ロシアのユリア・パハリナと、あのカナダのデブ」と答えて周りを凍りつかせました。

誰からも好かれる「文化大使」、姚明と福原愛

世界を相手に戦うスポーツエリートには、負けず嫌いで気性の激しい人が多いのですが、一方で、性格がよく誰からも尊敬される選手も多数存在します。その代表格が、ロジャー・フェデラー。彼は自身の勝敗に関係なく試合後のインタビューでは英語、ドイツ語、フランス語で、どんな質問にも紳士的な態度で答えます。

中国選手の中では、バスケットボールの姚明(ヤオミン)がそうしたタイプです。2002年にドラフト1位で指名されて以来、NBAヒューストン・ロケッツのセンターとして9シーズンにわたってプレーし、この間、オールスターゲームに8度選出。ニックネームは「移動長城」(歩く万里の長城)。229センチ、141キロの規格外の体格と多彩なシュート・テクニックで、2011年7月に引退するまでNBAを代表するスター選手として活躍しました。 

性格は穏やかで誠実、アメリカでも中国でも人気者だった姚明は、企業や製品広告の「代言人」としても引っ張りだこで、アップル、コカ・コーラ、VISA、マクドナルド、中国人寿(China Life)など多くの広告に起用されました。名実ともに「中国の顔」として、アテネ、北京のオリンピック開会式で旗手を務めています。

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