ラグビー日本「次の南ア撃破」も期待できる理由 初のW杯8強進出はなぜ実現できたのか?

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強豪国「ティア1」が大半を独占してきた8強という分厚い扉をこじ開けたのは、前任と現任2人のHCの手腕によるところが大きい。現イングランド代表HCのエディー・ジョーンズ氏と、後を継いだジョセフ氏である。

2016年に就任したヘッドコーチのジェイミー・ジョセフ氏(右から1人目)。1999年には日本代表選手としてワールドカップに出場している。中央がリーチ・マイケル選手(写真:AP/アフロ)

人心掌握術にも長けたジョーンズ氏は「日本代表がワールドカップで勝つこと」を目標に定め、選手に自らが所属するチームではなく代表を最優先に考えるなどの意識改革を促し、「戦う集団」へと変えるべく長期合宿などを通じて徹底的に鍛え上げた。

最大の成果が前回のW杯イングランド大会で南アフリカから上げた大金星だ。

強豪国相手に勝利を収めたことで、「ティア1」に属する各国代表チームとテストマッチを組むことが比較的容易になった。実際、日本代表は今大会までの間に、「ティア1」の10カ国すべてと対戦した。

ジョーンズ前HCは前回イングランド大会後に日本代表の強化策の一環として結成されたチーム、サンウルブズの創設にもかかわった。南半球の強豪国の選手が多く所属するチームで構成されるスーパーラグビーに参戦。多くの選手が代表やサンウルブズに身を置き、トップレベルでの試合を経験し、プレーや判断の正確さ、接点での厳しさを肌で感じたことがチーム力の強化につながった。

ONE TEAMの力を見せつけた

一方、ジョセフHCはジョーンズ前HCに勝るとも劣らぬ厳しい練習を選手に課した。今大会後にニュージーランドのオールブラックスのアシスタントコーチ就任が取りざたされる右腕のトニー・ブラウンコーチの指導なども奏功し、プレーの選択肢が増えた。選手のスキルや状況判断の正確さにも磨きがかかったといえる。

ジョーンズ前HCを招聘した日本ラグビー協会の岩渕健輔専務理事は昨年11月、東洋経済のインタビューにこう答えていた。

「ジョーンズHC率いる代表チームでは高いレベルで戦える選手が30人程度だったが、(ジョセフ体制下の)今は50人ぐらいいる。多少ケガ人が出ても、チーム力があまり落ちない」

今大会ではリーチ主将が先発から外れても、ほかの選手が見事にカバー。スローガンとして掲げる「ONE TEAM(ワンチーム)」の強さを見せつけた。エディー氏が種をまいて花を咲かせ、その花はジョセフ体制下で満開になった。

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