ロールモデルが周りにいない日本の女性は不利
5年前に日本に帰ってきて強く感じるのは、女性が社会進出するにあたって、欧米に比べてロールモデルが周りにほとんどいないこと。その点が、日本の女性は不利だと残念がる。
ゴールドマン時代、村上さんの直属の女性上司は結婚していて子どもが2人いた。
「彼女は3カ月ほど産休を取って復帰し、ナニーさん(住み込みのベビーシッター)を雇って働いていました。今では彼女はパートナー(経営層)になっている。目の前でそういう人を見ていると、それが自然に思えてくるのです」
村上さん自身は37歳のときに、モルガン・スタンレーに勤める2歳年下のアメリカ人と結婚。現在、10歳、8歳、5歳の一男二女の母親だ。ひとり目が生まれたときから、住み込みのナニーを雇い、今は通いの家政婦も雇って、家事・育児をなるべく任せている。
2人も雇えるのは、高収入の夫婦だからできることであり、普通の女性には無理だ。しかし、村上さんは「すべてをひとりで完璧にやるのは無理」と言い切る。
「私の仕事は海外出張が多いので、まず住み込みのナニーさんがいなかったら子育てはできません。それに子どもが3人いると、学校や習い事も場所と時間がバラバラで、送り迎えをしていたら夕飯の準備をする暇がない。だから通いの家政婦さんに来てもらっています。
もちろん、おカネはすごくかかりますよ。私はキャリアを築いてから子どもが生まれ、それを払っても見合う収入があったのはラッキーでした。だから、これがすべての人に当てはまるわけではない。
でも、日本で妊娠や出産を機に仕事をあきらめる女性が多いのは、お母さんが働きやすい環境でないことと、ロールモデルがいないのが原因だと思っています。成功している女性の多くが、私生活の部分で大きな犠牲を払っているのを見て、働き続けることを断念するのではないでしょうか」
調整力やマネジメント力に長けた村上さんが無理と言う、責任ある仕事と家事・育児の両立を、日本の働く女性が誰の助けも借りずにこなしているとすれば、おそらく必死に格闘しているはずだ。つややかな髪を保ってなどいられない。ボサボサ、パサパサの髪を振り乱すか、ひっつめて、自分の時間や体力と勝負しているだろう。その「男前」な姿を周りの若い女性たちが見て、「私にはできない」と思ったら、安倍晋三首相が掲げる「女性の活用」は進展しない。
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