「FIT終了」で変わる住宅用太陽光発電の活用術 住宅大手は顧客サービスの充実を目指す
FITもPV普及に大きく貢献した。太陽光や水力、風力など再生可能エネルギーの活用拡大を目的に既存電力会社が買い取ることを法律で定めた助成制度であり、産業用も含め2009年11月に買い取りを開始。これにより、住宅用は売電収入で初期費用をまかなえるようになった。
住宅用の買取価格は当初1kWhあたり48円。以降、次第に減額されていき、2019年度は24円(出力制御対応機器設置義務ありの場合は26円)となり、買取価格に合わせるかたちで住宅用PVの年間設置件数は次第に減少している。
なお、FITは「再生可能エネルギー発電促進賦課金」を電力料金に上乗せすることで制度が成り立っている。これまでに買取価格が減額され、制度そのものも終了する方向にあるが、それは国民負担を抑制する狙いからだ。
住宅用PVには10kWh以上が搭載されているケースもあるが、これは産業用として運用されている。産業用は買取期間が20年。価格は年々下がっており、2019年度は14円/kWhである。いずれにせよ、住宅用は10kWh未満がほとんどである。以上がPVとFITを巡る、これまでの大まかな経緯である。
2023年までに165万件が対象に
さて、資源エネルギー庁の資料によると、卒FITの対象は2019年11月と12月だけで53万件に及び、さらに2023年までの累計では165万件、発電規模は670万kWh(6700MWh=6.7GWh)になるとされている。これらは今後、自家消費、あるいは余剰電力の自由売電に移行することとなる。
前者はPVの発電電力を住宅用蓄電池にため、エネルギー自立に近い暮らしを目指すものであり、後者は大手地域電力会社(東京電力など)、または新電力会社による卒FITの買い取りプランを利用する方式となる。以下で後者の買い取りについて見ていく。
大手地域電力会社の標準買取予定価格は7.0円~9.0円/kWh(消費税込み、以下同じ)の範囲でほぼ収まる。東京電力系では8.5円/kWhだが、自家消費を可能にするエコキュートや蓄電池などの機器を、初期費用0円・月々定額料金で利用できるようにするなど、各社がサービス内容で差別化を図っている。
新電力会社は、電力自由化の流れの中で2016年4月に電気小売りが完全自由化されることを受け、誕生した企業のこと。正確には特定規模電気事業者(PPS=Power Producer and Supplier)と称され、さまざまな業種の企業、団体が参入している。
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