東急世田谷線、なぜ割高な「再エネ100%」で運行? 東北の地熱発電を活用、他路線へ展開できるか
地球温暖化防止のため、二酸化炭素(CO2)排出低減に向けた動きが加速する。4月23日、政府は「パリ協定」の目標達成に向け、今世紀後半に日本のCO2排出を実質ゼロとする目標を盛り込んだ戦略をまとめた。
産業界においても、事業の使用電力を100%再生可能エネルギー(以下、再エネ)で賄うことを目指す「RE100」企業の動向が注目されるほか、投資の分野においても、現在の企業業績のみならず、社会貢献や環境対応などを重視する「ESG投資」の手法が注目を集める。
CO2排出低減のキーワードとなるのが水力、地熱、風力、太陽光等の「再エネ」の導入拡大と、「水素社会」の実現だ。この2つに関連する、東急グループが携わる最近のシンボリックな動きを取材した。
再エネのみで電車を運行
3月25日、東急世田谷線は、東北電力から購入する水力・地熱発電所で発電された再エネ100%による電車の運行を開始した。
今回の取り組みの意義は、従来実施している省電力の新型車両の投入や、運転の仕方によって電力使用量を抑制する「エコ運転」プロジェクトといった「需要」側での省エネ施策に加え、電気の「供給・調達」の部分でもCO2削減に貢献することにあるという。具体的な仕組みは以下のとおりだ。
まず、電気の流れとしては東北エリアに所在する東北電力グループの水力・地熱発電所の一部で発電された電気が、東北エリアから東京エリアにつながる送配電線網を通じて世田谷線に供給される。東北電力と東急電鉄の間を取り次ぐのは、家庭向けの「東急でんき」を提供する東急パワーサプライ(出資比率:東急電鉄が66.7%、東北電力が33.3%)だ。
ただし、送配電線網を経由して届けられる電気が水力発電所等で発電された再エネ電気か、火力発電所等で発電された化石燃料由来の電気かというのは、物理的に切り分けられるものではない。再エネ100%で運行しているというのは、あくまでも計算上ということになる。
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