東急世田谷線、なぜ割高な「再エネ100%」で運行? 東北の地熱発電を活用、他路線へ展開できるか

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具体的な再エネ100%の保証の方法としては、対象の水力・地熱発電所の発電量の実績と世田谷線の電力使用量の実績を1時間単位で照合し、全時間帯において発電量が使用量を上回っていることを確認する。この方法は、経産省のガイドライン「電力の小売営業に関する指針」が示す、電源構成の適切な開示等の条件を満たしているという。

今回の事業の実現の経緯について、東北電力企画部課長の五十嵐厚氏は、「再エネに対するお客様のニーズは高まっている。一方で現段階では、供給できる再エネの量には限りがある。そこで、個別のお客様のニーズを踏まえながら、限りある環境価値を有効に使っていこうというスタンスで、複数の法人のお客様と個別に相談する中、いち早く東急グループから、再エネ100%で世田谷線を走らせたいという提案があった」と話す。

経済性がいちばんの課題

再エネを活用した今回のような取り組みの課題は、五十嵐氏の言葉にもあるように、再エネはまだまだ希少な電力であり、価格が割高ということだ。東北電力の発電設備全体の最大出力は約1749万kWだが、このうち水力は約245万kW、地熱は約19万kWで、合わせても全体の15%程度だ(資源エネルギー庁統計 2018年12月実績)。

「電気記念日」である3月25日に、世田谷線三軒茶屋駅で「再エネ100%電車」の出発式が行われた(筆者撮影)

東急電鉄も今回の事業の対象として世田谷線を選んだ理由について、東横線や田園都市線という電力消費量の大きい幹線の運行を賄うだけの再エネの調達が難しいこと、および割高な電気を使用するためコストを考慮したと説明する。

実は世田谷線の2017年度のCO2排出量実績の1065t-CO2(1年間で東京ドームの0.44個分)は、東急電鉄の全路線の0.5%にすぎない。従って、今回の取り組みは「再エネが電車でも使われるようになることで、再エネへの利用者の理解と普及を促す」という社会的な意義は大きいものの、実際のCO2削減効果としては限定的と言わざるをえない。

では、再エネは今後、供給量が増え、価格が下がる見通しはあるのか。この点について、五十嵐氏は「東北・新潟の再エネは大きな潜在力があり、中でも洋上・陸上合わせた風力発電は、およそ1000万kWの潜在力がある。今後、責任ある事業主体として再エネ事業を推進していくうえでは、そのうちの2割が必要だ。そこで、今年1月に風力発電を主軸とする200万kWの新たな開発目標を発表した」と話す。

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