東急世田谷線、なぜ割高な「再エネ100%」で運行? 東北の地熱発電を活用、他路線へ展開できるか
こうして送られた水素を東芝製の100kW純水素燃料電池「H2Rex」で、空気中の酸素と化学反応させて電気へ変換し、発電するシステムになっている。もちろん、発電の際にCO2は排出されず、燃料電池から排出されるのは水だけだ。発電された電気は、施設に外部から供給される電気の大本の部分につなげられているため、「具体的にホテル内のどの場所で消費しているということではなく、ホテル全体の消費電力の3割程度が賄われている」(川崎REIホテル総支配人の荒木茂穂氏)という。
また、発電で発生する熱も利用可能であり、「燃料電池のそばを20度くらいの水を通すと60度くらいまで温度が上昇する。これを給湯器に接続することで、湯沸かし時の省エネにつながる」(荒木氏)仕組みになっており、やはりホテル全体の熱消費の3割程度が賄われる。
以上のような、低炭素水素を作る・運ぶ・ためる・使うというサプライチェーン全体で、総合的にCO2を削減できるかを検証し、さらに他地域への普及拡大に向けた課題を抽出するのが今回の実証事業の目的だ。
水素もネックは価格
ちなみに、川崎REIホテルは「世界初の水素ホテル」を掲げているが、実はホテルでエネルギー源として水素を利用する事例としては、2016年3月にオープンした、ハウステンボスの「変なホテル」2期棟が先行する。
変なホテルが採用しているのは、東芝の「H2One」というシステムだ。こちらは太陽光による再エネ電力を利用して水を電気分解して得た水素を蓄積し、これを燃料電池で使うという、いわば自給自足システムだ。
川崎の事業が新しいのは、使用済みプラスチックを原料とする水素を使い、パイプラインで送るなど、サプライチェーンモデルの部分ということになる。
こうした水素による商用発電を行う場合の発電コストは、現在は技術開発段階であるため、明らかになっていない。経産省がまとめた「水素基本戦略」によれば、2030年ごろまでに、スケールアップによる大幅なコストダウンにより17円/kWhを目指すとする。仮にこれが実現するならば、LNG(液化天然ガス)火力発電の13.7円/kWhにも近い数値となる。
しかし、今回の実証事業を見る限り、燃料電池自体の価格に加え、低炭素水素を製造するプラントやパイプラインなどのインフラ整備にかかる莫大なコストが、「水素社会」実現のネックになることが想定される。
そこで、コスト面で先行する海外産の再エネや水素を大量調達するというアプローチもある。ただし、海外資源に過度に依存すれば、我が国のエネルギー政策の基本である「3E+S」(エネルギーの安全供給・経済効率性・環境適合・安全性)の1つである「エネルギー安全供給」の観点からのエネルギー自給率向上の根本的な解決につながらない。
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