東急世田谷線、なぜ割高な「再エネ100%」で運行? 東北の地熱発電を活用、他路線へ展開できるか

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ちなみに、災害やトラブル等で東北からの再エネが安定して供給されなくなった場合には、どのような対応が取られるのだろうか。

想定されるケースはいくつかあるが、まず、そもそもすべての電力が東北から送電できなくなった場合は、どうするのか。この場合は「送配電事業者の東京電力パワーグリッドが、各電力小売会社が電力供給できなくなった不足分を代わりに供給する仕組み」(東急電鉄広報課)になっており、世田谷線がストップすることはないという。

また、対象の水力および地熱電源の発電量が計画値を下回るケースも考えられる。災害等で複数の発電所が同時に停止するケースや、世田谷線の電力消費量のみであれば考えづらいが、今後、同様の電力提供事業が増えていけば、再エネ消費量が供給量を上回り、排出係数を満たせなくなることも考えられる。

このような場合は、「J-クレジット」制度(CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして国が認証する制度)に基づき、不足分の発電に伴い発生するCO2と同量の排出権を東北電力が購入することで、再エネ電力とみなすことになっているという。

水素活用のサプライチェーン

次に水素の利活用拡大に向けた興味深い取り組みを見てみよう。水素は利用時にCO2を排出せず、再エネ電気を含むエネルギーの貯蔵・運搬にも活用できることから注目される。

取材したのは、川崎の「殿町国際戦略拠点 キングスカイフロント」に昨年6月にオープンした「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」(以下、川崎REIホテル)だ。同ホテルは東急ホテルズが運営し、「世界初の水素ホテル」を掲げ、敷地内に設置された純水素燃料電池により、ホテル全体で消費する電気や熱の約3割を賄っている。

川崎REIホテル敷地内に設置されている純水素燃料電池(筆者撮影)

ただし、この事業は東急ホテルズが主体的に行っているものではない。5kmほど離れた川崎市扇町に事業所を持つ昭和電工が、環境省が公募した「地域連携・低炭素水素技術実証事業」(2015年からの5年間)を受注し、東急ホテルズはこれに協力している。

実証事業の具体的な内容・仕組みは以下のとおりだ。まず、昭和電工川崎事業所で、川崎市周辺で回収された使用済みプラスチックを原料に、水素の製造段階でもCO2を排出しない低炭素水素を精製する。昭和電工は、製品としての工業用アンモニアを製造しており、アンモニアの原料となる水素も使用済みプラスチックを加工して抽出している。つまり、もともと持っている低炭素水素を製造するプラントとノウハウを実証事業に生かしているのだ。

昭和電工で作られた水素は、パイプラインで5kmほど離れた川崎REIホテルに送られる。京浜工業地帯の内部には、既存のパイプラインが張り巡らされており、今回の実証実験のためにパイプラインを延長したのは、ホテルまでの約1km分だという。

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