「神を祀る存在」天皇とローマ教皇の決定的違い

長い歴史の中で確立された天皇の歴史

灯明に照らされた神座のある内営に天皇だけが入り、皇祖の天照大神をはじめ神々に祈りを捧げます。その年に収穫された新穀を神々に供え、天皇自らも食べ、五穀豊穣と国家国民の安寧を祈ります。

このように、天照大神の霊統を継ぐと信仰される天皇は人間世界を代表して、神を祀る存在、つまり最高祭祀者、あるいは祭祀王と見なされます。

天皇は本当に教皇に近い存在なのか?

最高祭祀者といえば、世界的に有名なのはローマ教皇。天皇はその立ち位置に近いとされることがあります。

ローマ教皇はカトリック教会の最高祭祀者である点で、確かに天皇と共通点があります。しかし、根本的に両者はその内実において、異なる存在です。

まず、教皇位の継承は天皇と違い、世襲ではありません。各地のカトリック教会を代表する枢機卿(カーディナル)たちが「コンクラーベ」(ラテン語の「鍵がかけられた」の意)という選出会に集まり、外部と隔離された状態で、教皇を選挙します。

天皇は神の子孫とされ、世襲です(繰り返しますが、本当に神どうかは別として)。教皇は神の子孫でもなく、神の子なるイエス・キリストの子孫でもありません。教皇はローマ・カトリック教会の主座であり、キリストの12使徒の1人ペトロの後継者です。

キリストの死後、ペトロがローマにやってきて、この地に教会を開きました。当初、ローマ帝国の迫害を受けながらも、ローマ教会は信徒により守られ、発展していきます。ローマ帝国が4世紀にキリスト教を公認して以降、ローマ教会の地位が確立し、その主座である教皇の地位も認知されました。教皇は使徒ペトロに由来する特別な起源を持つことから、キリスト教世界の指導者となります。

5世紀半ばの教皇レオ1世は「自分の声はペトロの声である」と述べ、使徒の代理人(ラテン語:Vicariusウィカリウス)を自認します。さらに、同世紀末には、キリストの代理人を自称するようにもなります。こうして、教皇の位は歴代引き継がれ、今日まで続きます。

神の子孫とされる天皇位が世襲によって引き継がれるべきものであるのに対して、イエスや使徒の代理人とされる教皇は世襲によって引き継ぐべき神性を持ちません。代理人は代理人でしかなく、有徳者でありさえすれば、赤の他人でもよいということです。祭祀王=プリーストキングという言葉のイメージから、天皇が教皇に例えられることが多いのですが、「神の子孫」と「代理人」は自ずと異なる存在です。

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