アメリカの景気拡張もいよいよ終わりなのか 製造業から非製造業への波及は時間の問題
そして迎えた10月4日発表の9月雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)に関し、前月比プラス13.6万人と市場予想の中心(同プラス14.5万人)を割り込んだ。また、平均時給も前年比プラス2.9%と過去1年で最も低い伸びにとどまった。基本的にISM景気指数(製造業・非製造業)における雇用項目の動きは雇用統計における非農業部門雇用者数変化と安定した関係があるので、9月雇用統計のNFPの弱さはある程度は予見されていた。
一方、失業率は既に十分低いと目される3.7%から3.5%へさらに下がり、50年ぶりの低水準をつけている。FRB(連邦準備制度理事会)スタッフ見通しで見込まれる自然失業率(≒長期失業率、4.4%)から約1%ポイントも下振れている状況であり、真っ当に考えれば今が完全雇用状態に近く、永続性は期待できない状態だろう。ということは次に想定すべき局面は悪化含みである。
雇用の量は減速、賃金にも失速の兆候
実はその兆候はもう出ている。雇用統計は振れの大きい統計だ。そこでNFPの前月比変化に関し3カ月平均や6カ月平均を見れば2014年後半から2015年前半を境として明らかに限界的に積み上げられる雇用の「量」は減ってきていることが分かる。
一国における「働ける人の数」は決まっているのだから「完全雇用状態を経て減少に至る」こと自体は何ら不思議ではない。アメリカ景気の拡大局面は10月で125カ月目に突入しているので「働きたい人が全員働けている状態」(≒完全雇用状態)に直面し、雇用統計のヘッドラインがだんだん弱くなってくることは理論的にも当然であろう。
問題はそこまでの状況に至っているのに平均時給が騰勢を強めることなく、むしろ失速の兆候すら出始めていることだろう。昨年まで利上げ局面にあったFRBはこうした完全雇用とも言える労働市場の状況を踏まえ、「非線形に賃金が上昇してくる恐れ」も念頭に利上げを敢行していたところがあった。しかし、その恐れはまだ実現しておらず、利上げ局面は終了、今や連続的な利下げを強いられている始末である。
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