アメリカの景気拡張もいよいよ終わりなのか 製造業から非製造業への波及は時間の問題

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上述してきたように、仮に製造業の不調が非製造業にまで不調をきたしてくるとなると、NFPの変化にも小さくない影響が懸念される。現状、NFPの8割以上は非製造業(ここではサービス部門と見なしている)であり、毎月の変化幅を見ても7~8割が非製造業で説明できる。今後、非製造業にまつわるISM景気指数のようなソフトデータが連続的に崩れ始めた時に雇用統計のヘッドラインも大きくイメージが変わってくる可能性があることは念頭に置きたい。その場合は金融市場の潮流にも影響が出てくるだろう。

政治問題以前に構造的に成長が伸びきっていた

10月第1週目に連続したアメリカ経済指標の悪化は基本的ではあるものの、いちばん大事なことは何なのかを思い起こさせてくれるものだったように思える。年初来の金融市場は米中貿易戦争をめぐるヘッドラインに右往左往してきた。株価の推移などほとんどそれで説明できるだろう。

しかし、米中貿易戦争や英国のEU(欧州連合)離脱、中東情勢といった政治的なテーマの先行きは重要だが、メインシナリオを構築する決定的な要因ではない。それは景気の現状と展望を読む上での「ノイズ」であり、景気循環の「寿命の長さ」に影響することはあっても、景気の方向を決める要因にはなりえない。

米中貿易戦争で企業部門の消費・投資意欲が衰えたのは間違いないが、それ以前にアメリカ経済は(雇用市場を中心に)成長が伸びきっていたという事実を忘れてはならない。今後のFRBの政策運営も「雇用統計は悪化含み」を前提にシナリオを作るべきであり、これと整合的な為替や金利、株価の見通しを検討していきたい。

※本記事は筆者の個人的見解であり、所属組織とは無関係です。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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