ソチ五輪も土木工事も、「人と水の戦い」だ! 地下水あふれる地中にコンクリートのビルを落とす!

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ニューマチックケーソン工法は、この原理を利用して、周囲の地下水の流入を防ぎながら地下へ地下へと掘り進める工法なのである。水に強いことから、ニューヨークはブルックリン橋、パリはエッフェル塔(のセーヌ川寄り)、日本でも隅田川の永代橋の建設にと活躍した、実績と歴史のある工法だ。

ただ、洗面器は我々が力任せに沈めればいいが、建物となるとそうはいかない。そこで、ひっくりかえした洗面器の底の上に、コンクリートで構造物(これをケーソンと呼びます)を造り、その構造体の重さを利用しながら、じわじわと沈下させていく。ここ小松川では、コンクリートは11回に分けて注入される。使用量は1回あたり3000立方メートル。小中学校にあるような25メ―トルプールの容量は300立方メートルくらいだから、その10倍。さらにそれが11回である。

3000立方メートルの生コンは、重さにすると7200トンにもなる。これが、朝8時から夜8時くらいまでの間に一気にここへ運び込まれる。運んでくるのは生コン車。いっぺんに750台が手配される。

「ピーク時は、生コン車は1分に1台、空になります」--東急建設小松川作業所の布藤省三所長の解説には驚くばかりだ。我々はさらに驚かなくてはならない。そのコンクリートの下には、人がいる。建物を造りながら沈めるには、洗面器の内側に空気を送り、底の上にコンクリートを積み上げれば一件落着、ではない。洗面器の内側(作業室と呼びます)には、掘り進める人間が必要だからだ。

コンクリートの底部にある作業室の天井高は2.3メートル。外から空気が送り込まれているので、高圧の状態だ。ここで、狭いところでも作業がしやすいケーソンショベルなどを使って掘削が進む。この技術を持っている会社は、日本に3社。閉所恐怖症のボクは、このあたりで説明を聞くのがしんどくなってくる。

ヘルメットとゴム長で変身

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ヘルメットだけでなくゴム長もお借りした

こうした取材を進めている間、ボクはヘルメットを被っている。この連載が始まってから、ヘルメットを被る機会が増えた。ひとたび被ると、仮面ライダーの変身ベルトを巻いたときみたいに、これひとつで自分がぐっと強くなった気がしてワクワクする。今回はゴム長も履いているので、ワクワクの2乗である。

でも閉所恐怖症のボクは作業室には入れそうにない。作業室で仕事ができるのは、潜函工と呼ばれるプロだけだ。今はまだケーソンが浅い場所にあるため、組んだ足場から覗き込むと、潜函工が作業をしている様子が見えるという。覗き込みたいような、覗き込みたくないような……。

いました。掘っていました。掘り出された土はバケツに入れられ、高く吊り上げられたかと思うと、ロープウェイのような排土キャリアで運ばれる。

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