ソニー次期社長レースの号砲、平井SCE社長が最右翼、吉岡浩副社長の声も
ソニーが2月27日に発表したトップ人事が波紋を広げている。4月1日付で中鉢良治社長が現職を退いて副会長に就き、ハワード・ストリンガー会長兼CEOが社長を兼務する。消費減退と円高の打撃で2009年3月期は2600億円という過去最悪の営業赤字に陥るソニー。ストリンガー会長は「今は機動的な体制への変革が必要」と、権限集約で難局を乗り切る意志を示した。
中鉢氏は4月以降も代表権を与えられたままで、役員格そのものは変わらない。だが実務への影響度が急速に低下するのは必至で、今回の人事は「中鉢氏の更迭」とも報じられた。だがソニー社内でより深い意味を持って受け止められたのは、ナンバー3である井原勝美副社長の処遇だ。
井原氏は携帯合弁会社立ち上げなどに貢献し、出井伸之・前会長時代から社長候補と目されてきた。だが今回、現在の代表執行役から二つ格下の業務執行役員に降格され、さらに6月には子会社取締役に転じてソニー本体を離れる。次期トップ候補からは完全に姿を消すことになる。
兆候はあった。業績急悪化が確定した08年10月、ストリンガー会長は工場再編などの構造改革に乗り出したが、改革統括幹部6人の中に井原氏の姿はなかった。ストリンガー会長は事業撤退や生産外注が進まないエレキ事業にいらだっており、井原氏が責を負わされた形だ。年末以来、関係者の間では「井原氏でないなら、誰が次のトップか」が話題の焦点だった。
ソフトvs.エレキで競う
衆目の中で発表されたのが想定外の「会長兼社長」。ストリンガー会長は新社長を選ばない理由を「機動的なビジネスには余分なレイヤー(層)や官僚的組織は必要ない」と説明する。額面どおりなら、業績回復まで兼任の重責を引き受けることになる。
だが67歳という年齢や米国在住という条件から、「兼任は過渡的措置」とするのが社内外関係者の一致する見方。準幹部級からは「もう一段の業績悪化を想定し、6月の株主総会での引責辞任を準備している」という“2カ月政権説”まで出ている。そこで注目されるのが「次世代のリーダー」とストリンガー会長が称する若手幹部たちだ。