KDDIがたった1カ月で販売プランを変えたわけ 総務省は四半期ごとの収支報告を求める

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両社に対しては、もともと端末を大幅値引きする売買だけでは採算が合わず、通信料金に転嫁して回収する設計だったのではないか、という疑惑が総務省や競合他社から出ている。そうならば、他社回線利用者に端末を大幅値引きで買われるのは都合が悪いということになる。

しかも、KDDIの今回のプログラム変更は、自社回線の利用者にも大きな影響を及ぼす。プログラムを自社回線利用者に限るため、値引き上限2万円の規制の対象となり、端末の値引き幅を縮小せざるを得なくなるからだ。今後の値引き幅について、390円のプログラム利用料を廃止したうえで検討するとしている。

問われるプログラム利用料の根拠

総務省は10月1日、KDDIとソフトバンクに対し、販売プログラムの収支を四半期ごとに報告するよう要請した。

総務省はKDDIとソフトバンクに四半期ごとの収支報告を求めた(記者撮影)

具体的には、端末の割賦代金やプログラム利用料、利用者に返却させた端末の売却額(転売額)の収入と、端末の調達費用などの支出についての数字を明らかにするように求めている。また、プログラム利用料を徴収する理由や金額の根拠についての説明も求めている。

KDDIが11月からプログラムを大幅修正することについて、ある総務省幹部は「変更しなければ、こちらが要請した収支報告やプログラム利用料の理屈をうまく答えられないからではないか」と話す。総務省が求めたのは、他社回線利用者がプログラムを使う場合にSIMロックを解除することで、他社回線利用者をプログラム対象から外すことではない。

一方、ソフトバンクはプログラムを変更しない方針だ。総務省の求めに従い、他社回線利用者がプログラムを使って端末を購入した場合には、SIMロックの即時解除に応じるという。ただし分割払いの端末代金が未回収となるのを防止するため、クレジット払いや預かり金の徴収などを求めていく。

ソフトバンクの方針について、同業他社は「他社利用者への端末大幅値引き販売で利益を上げるのは難しいはずだが、ショップに来てもらう動機にはなる。料金が安いワイモバイルへの勧誘も可能で、顧客を奪われないか心配だ」と警戒する。

ただし、ソフトバンクはプログラム利用料を継続するとしているが、今後はこれが規制される可能性もある。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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