「ウーバーイーツの配達員」下請け横行の実態 仕事のない移民などが配達をしている
パリの独立配達員ユニオンの代表であるジャン・ダニエル・ザモールは、「配達の仕事はより不安定なものになっている」と言う。「賃金が少なくなっているため、貧しい配達人がさらに貧しい人々に仕事を委託するようになっている」。
ウーバーイーツやフランスのスチュアート、スペインのグローボなどは、こうした行為を認識しているという。スチュアートのグローバルマーケティング・マネジャーのニコラス・ブルイユは「これは違法行為であり、他者の弱さを利用して利益を得る行為だ。当社は懸念を抱いている」と述べた。
フランスの大都市の1つ、ナントでは、労働監督官が調査を開始した。スチュアートとデリバルーによると、アカウントの悪用を防ぐために、両社は政府の省庁と話をしたという。デリバルーは文書で、「この問題に関しては、断固とした姿勢をとる」とし、「浮上してきた問題に関して徹底的に調査を行う」と述べた。
グローボのフランス担当ゼネラル・ディレクターは、労働許可証などの書類を持たない人を雇う配達員は、独自に搾取の仕組みをつくっているのであり、「これは大きな問題だ」と話した。同様の搾取が起こる条件がほかの欧州諸国にも存在し、イギリスやスペインでも問題が報告されている。
賃金体系変更で配達員によるストライキも
フランスではきちんとテーブルについて食事をすることが文化的に重視されており、近年まで料理のデリバリーのサービスはほとんど見られなかった。しかし、2015年にデリバルーが参入してからは状況が変わり、ウーバーイーツやほかのデリバリー・アプリがこれに続いた。
これらの企業の配達員の募集には何千人もが応募し、とくに失業率が高い郊外に住む人々や、学生などが集まった。しかし、ニューヨーク・タイムズの取材に応じた配達員たちによると、企業はさらに配達員を募集しており、賃金は下がっているという。配達員は独立事業者として応募することを求められる。そうすれば、フルタイムの従業員を雇う場合に必要な税金や、その他の費用の支払いをしなくて済むからだ。
デリバルーは、2017年に賃金体系を変更した。以前は、時間当たりの固定賃金に歩合賃金を加えて支払っていたが、変更後は配達1件当たり一律5~5.75ユーロの支払いとした。この変更を行った後、フランスでは販売員によるストライキが起こった。ウーバーイーツの配達員も、2018年のサッカーワールドカップの最中に、賃金と労働条件が不十分だとして、部分的なストライキを実施した。
企業側は、賃金が下がっているという主張には同意していない。
ウーバーイーツによると、フランスの配達員は、午前11時半から午後2時までと午後7時から10時までの忙しい時間帯には、1時間当たり平均で10~15ユーロを稼ぐという。デリバルーとスチュアートは、配達員が手にする金額は、1時間当たり平均で13ユーロだとし、グローボでは10ユーロだという。