「ウーバーイーツの配達員」下請け横行の実態 仕事のない移民などが配達をしている

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一方の配達員は、企業が言う公式の数字は、実態を反映していないと話す。配達員たちはここ数年で25%以上支払いが減った仕組みについて話し、それが仕事を下請けに出す動機となっているという。彼らは、企業は自らの社会的責任について宣伝しているが、結局のところ、だれが配達を行っても、企業は利益を得られるのだと話す。

20代半ばの配達員は、「毎年稼げる金額が減り、配達も減っている」と言う。「企業側は賃金の引き下げや支払いルールの変更など、労働条件を変えている」。この配達員は、3つのデリバリー会社に登録して働いていたが、いまではそれらのアカウントを不法入国者に配達賃金の30%で貸しているという。

ドラッグ売人など「不正」な仕事よりはいい

アフリカや中東を脱出する移民が増えると、フランスには亡命希望者が増え、その人たちは審査が終わるまでは仕事に就くことができない。しかし、本紙がインタビューした移民たちは、「働く必要がある」と言い、自転車に乗ることは、ドラッグの売人などのもっと不正な仕事よりはいいと話す。

デリバリーに向かう配達員たち(写真:Dmitry Kostyukov/The New York Times)

フランスの労働法では、独立事業者が合法的な労働者に業務を委託することは認められている。しかし、ウーバーイーツやスチュアート、グローボは、業務の委託を禁止している。デリバルーは、労働許可書を持った人になら、業務を委託することは可能だとする。しかし、同社は抜き打ちでチェックを行い、配達員のデータを調べている。「もし配達員が働く資格のない人に仕事を委託したら、当社は即座に契約を解消する」という。

冒頭で紹介したアファウイは、ほかの選択肢はほとんどないと言う。経済状況が厳しいチュニジアを離れ、彼は昨年9月にほかの数百人と一緒にリビアから船に乗った。イタリアに到着すると、フランスに向かう列車の中に隠れたという。彼は亡命を申請するかもしれない。

「ウーバーイーツのアカウントを1週間100ユーロで貸してくれる人に出会った」とアファウイは話す。多い日には1日13時間働き、手取りの収入は週200ユーロほどだ。

アファウイの夢は魚売りになることだ。「(魚売りは)今の仕事より危険じゃない。デリバリーの仕事は、すぐに届けなければいけないし、終わったら次の場所に急がなくてはならない」。しかし、魚を売る仕事をするためには労働許可書が必要だ。

「デリバリーの仕事をするのは簡単だ」と彼は言う。「誰も身分証明書を見たりしないし、アカウントもすぐに見つかる」。

(執筆:Liz Alderman記者、翻訳:東方雅美)
© 2019 New York Times News Service

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