アメリカの企業債務残高はFRBの集計では15兆ドルに達して名目GDPの7割を超えている(リーマンショック前の最高値超え)という。そして、社債の残高にあってBBB格以下の物の拡大が近年目立つ。
また、社債の外にも、信用度の低い企業向けの条件の緩いローンが近年増えていて、これがかつてのサブプライムローンを証券化したような金融商品として組成されていて(「CLO」ローン担保証券)、運用の低利回りに悩むアメリカ内外の機関投資家によって保有されている(日本の投資家の保有も多い)。
バブルはすぐには弾けない
最近になって、日本でも、「米低格付け融資 資金流出続く」(『日本経済新聞』9月22日)、「ワイド化し始めた米ハイイールド債市場はまだ大丈夫か」(石原哲夫『週刊金融財政事情』9月23日)といった、一部の投資家の警戒的な動きを伝える報道が見えるようになって来た。
もっとも、経験的に言って、大規模なバブル崩壊の場合、「警戒」されはじめてから、連鎖的な崩落に至るまでに何年か掛かることが通例だ。日本の株価と地価は1988年にはすでに高過ぎるという意見と、まだ大丈夫だという意見(「Qレシオ」という珍説を唱えた人がいた)の論争があったし、アメリカの不動産価格にしても2000年代前半から警戒の声があった。
さて、債券に対する「バブル」があるとして、崩壊に際しては、(1)「ベースとなる国債等の金利水準の急上昇」と、(2)「信用リスクの過小評価の顕在化」の2種類の問題がある。
前者は、長期国債の利回りが急上昇(価格は急落)するような事態だが、これは、金融緩和政策が続いていてかつインフレ率が政策的な目標よりも十分に低い間は実質的に中央銀行の買い支えが可能なので、「しばらくは」問題にはなりにくい。経済政策全体としては、財政政策が消極的であることの問題の方が大きかろう(日本では特にそうだ)。
ただし、インフレ率が目標以上に上昇して中央銀行が金融緩和政策を続ける名目がなくなったときには、急激な金利の上昇と債券価格の暴落に見舞われることを覚悟しなければならない。金融システムも相当に痛むことになるだろう。その時が、既存の金融ビジネスと、デジタル・テクノロジーをベースとする金融ビジネスの覇権が交代する契機になるのかもしれない。
一方、信用リスクに対するスプレッドの拡大や、デフォルト(債務不履行)そのものの発生の可能性については、低格付けの債券やローンの残高が積み上がっている現状が「脆弱な状態」になっていることは事実だろうが、「当面」その問題は顕在化しにくい。大規模な問題が起こるのは、実物経済が不況に傾いた時だろう。
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