この「市場深読み劇場」の連載が始まったのは2012年の秋、第2次安倍晋三内閣が始まる少し前くらいの時期だった。思えばずいぶん長く書き続けてきたものである。
当時は、東洋経済オンラインがまだ「月間500万~700万PVくらい」であった。それが今では2億PV前後ということだ。この低成長時代に、「7年間で何十倍にもなったのはすごい伸びと言えよう。われわれ3人の執筆者は偶然にも、スマホ使用者の拡大とネットメディアの勃興期に居合わせたことになる。その意味で、まことにラッキーだったのかもしれない。
ぐっちーさんが耳元で囁いているような気がする
それでもコンテンツが悪かったら、連載が足掛け8年も続くことはなかったはずである。昨年11月の「東洋経済オンライン・レギュラー執筆者感謝の夕べ」では、われわれ3人は「ロングランヒット賞」なるものを頂戴した。いわば「長く続いたで賞」、中年オヤジ3人組は「無事これ名馬」であると認定してもらったのである。
ところが世の中はわからないもので、ぐっちーさんはこの9月、天に召されてしまった。そうなのだ。どんな楽しいことであっても、いつかはかならず終わりがやってくる。そのことはわかっているつもりなのだが、実際に起きてしまうと、後に残された者としては途方に暮れるしかない。
果たして山崎元さんと私の2人で、この連載を続けるべきなのだろうか。いちばん派手なキャラを失った「トリオの残りの2人」に、存在価値はあるのだろうか。読者はついてきてくれるのだろうか。そんなことを自問していると、故人が耳元で「書きなよ、どうせネタはいっぱいあるんだろ?」と囁いているような気がしてきた。
ぐっちーさんに会った人なら、みんな知っているだろう。明るくて、賑やかなことが好きで、笑顔が素敵な人物であった。「おいおい、オレのことで落ち込むなんて許さないぜ」、と怒られてしまいそうだ。
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