余談ながら、このことは口を極めて米連銀を罵っているドナルド・トランプ大統領にとっても悪い話ではない。アメリカ経済が失速するのは、かならず利上げ局面においてである。そして利下げは年内にあと1回はあるだろう。どんなに早くても、次の利上げ局面が始まるのは2020年の夏以降。次の米大統領選挙(2020年11月3日)への影響は軽微となる見込みだ。
皆が昔のことを忘れてしまっている
もっとも3度のミニ調整を経たからと言って、景気拡大が永遠に続くものではない。どんなに楽しいことでも、いつかかならず終わりがやってくるのは経済も同じこと。リーマンショック直後を起点とする景気拡大局面は、ざっくり8合目くらいまで来てしまったのではないだろうか。
問題は、この間に皆が昔のことを忘れてしまっていることである。CDOの中身を、住宅ローンから企業向けローンに変えただけのCLO(ローン担保証券)なんてものが最近では人気になっている。借り手の企業は、その資金をM&AとかLBO(買収先の資産などを担保にお金を調達してM&Aを行うこと)とかリスクの高い用途に使っている。それでも投資家は、「全部が一度に悪くなることはあるまい」とタカをくくっている構図は、CDOのときと全く同じである。
特に日本勢はCLOのことを、「この低金利時代における干天の慈雨」みたいな受け止め方をしている。9月のThe Economist誌は、「どの会社がデフォルトしそうで、どの債券に値打ちがあるかというアナリストの仕事はもはや過去のものとなった。『日本勢の買いはクレジットリスクではなく、ヘッドラインの金利しか見ていない』とアナリストは嘆く」などと皮肉っている(9月20日号”The Japan bid”「日本勢の買い」)。
長引く低金利時代は、リスクを取ってはいけない人にリスクを取らせているのではないだろうか。その点で、12年前のサブプライム問題と似たような構図がある。今日の高度な金融商品には、売り手と買い手の間に情報の非対称性がある。そしてウォール街の強欲と奸智と無責任は、リーマンショック以前とまったく変わってはいないのだ。
ぐっちーさんはそんな世界に嫌気が差して、「売り手」を辞めて「書き手」になった。そして読者に内情を知らせてくれた。この後、そんな奇特な人が現れるだろうか?ということで、ぐっちーさんとマーケットの昔話はこれにて一巻の終わりである(本編はここで終了です。次ページでは競馬好きの筆者が週末のレースを予想します。あらかじめご了承下さい)
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