被ばく不安の慰謝料払う和解案、東電が応諾 福島県伊達市、飯舘村の住民1200人に損害賠償

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ADR申し立てが地域ぐるみで進められたことは、センターの仲介委員に住民の窮状を伝えることにも力を発揮した。

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ADR申し立てへ、尽力した菅野喜明・伊達市議会議員

伊達市での地域ぐるみの申し立てを縁の下で支えたのが、地元出身の菅野喜明・伊達市議会議員(37)だった。

「同じ集落内で同じく高い放射線量にさらされているにもかかわらず、基準である年間20ミリシーベルトの推定被ばく線量(3.2マイクロシーベルト/時以上)をわずかに下回ることを理由に救済対象から外されたのはあまりにも理不尽だ。何とか解決の道筋を考えてほしい」

こうした住民からの要請を踏まえた菅野氏の働きかけによって、小国地区では行政区レベルでADRを申し立てる機運が持ち上がった。そして、原発事故被害者救済に力を注いできた丸山弁護士らによる現地視察を踏まえて、原子力損害賠償紛争解決センターへの申し立てが実現した。原発事故発生から2年近くが過ぎた2013年2月5日のことだ。

疲弊著しい農家、小学校は入学ゼロ

ただ、東電が中間指針に明示されていない賠償を支払うことを強く拒否したことからADR手続きは難航。1年かけてようやく和解による決着にこぎ着けた。

菅野市議によれば、「今回の和解成立は、特定避難勧奨地点に指定されて賠償を得た世帯と指定されなかった世帯との格差を是正するうえでの第一歩になる。ただし、地域では放射性物質の除染の徹底や安全に子どもが生活できる環境作りなど、課題は山積している」。

小国地区では、作付制限や賠償縮小などで農家の困窮が著しい。営農意欲を失った農家の廃業も目立つ。放射線被ばくへの不安から、13年4月に小学校の入学児童が一人もいなかった。また、特定避難勧奨地点が指定された11年6月以降、指定されて賠償を得られた住民と指定されなかった住民との間に生まれた軋轢により、春や秋の祭を開催できない集落も少なくない。

和解にこぎ着けたとはいえ、地域の立て直しはようやく始まったばかりだ。
 

 

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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