「怖いもの知らずの起業」が全然ダメな根本理由

「サードドア」著者、未来の起業家に語る

ラリー・キングとの出会いから学んだことは、粘り強さ、つまり一貫性が大事だということです。世の中には明白なメッセージと、無言のうちに発せられているメッセージがあります。

もし経営者が部下に、「イノベーションこそ大事だ、リスクをとって挑戦しろ」と言ったとしますよね。でも、実際にリスクをとってチャレンジした結果が失敗で、その部下がクビになったとしたら、もう誰もイノベーションに挑戦しようと思わなくなりますよね。

子どもに対して、親はこう言います。「挑戦するのはいいことだ、頑張ってみたら」と。そう言われた子どもは例えばサッカーを頑張ってみる。1年経ち、2年が過ぎる。でもなかなかレギュラーにはなれない。そして3年目もダメだったとする。すると親は「サッカーはやめてバスケットボールをやったら?」なんて言う。このメッセージは何を意味しているでしょうか。

無言のうちに、諦めなさい、と言っているようではありませんか。私たちは、小さな頃から、こうした無言のメッセージを受け取っています。でもそれは間違っています。私が経験から学んだことは、粘り強く、一貫性を持って、自分が納得するまで何度でもやり続けることが大事だということです。

私が強く言いたいのは、起業家への道には、必ず恐れと失敗がついて回るということです。恐れや失敗は、悪いことだと考えがちですが、そうではなく、それもまた道の一部なのです。みなさんには、納得するまで何度も挑戦して、粘り強く続けてほしいと思います。

自分の可能性を信じる

最後にみなさんと共有したいことがあります。『サードドア』が世界各国で出版されたいま、この本の目的は何だったのか、という問いに私は立ち返っています。

当初は、もっと実践的な成功への知恵を詰め込んだ本にしようとも思っていました。もちろんこの本には、例えばビル・ゲイツの交渉術など、実際に役に立つ話もあります。けれども実は、この本は、もっと深いことを提供できるのではないかと考えています。『サードドア』というこの本、このコンセプトの魂となっているのは、「可能性」ではないかと思っているのです。

私が学んだことを大勢の人に伝えることはできます。でも、私の経験から誰かが何か知識を得ることができたとしても、その人自身が自分の可能性を信じていなければ、何も起こらないのです。

ボルチモアというアメリカ東部の荒廃した町で、こんなことがありました。貧困地区の小学校の先生が、子どもたちに「将来の夢」を絵に描くように言ったんです。みんなが絵を描き始めましたが、いちばん後ろの席に座っていた男の子は30分経っても何も描きません。そしてようやく思いついて描いたのは、ピザの配達員の姿でした。

先生はその子の母親に電話をしました。すると母親はこう言ったのです。「別に驚くことではないでしょう。あの子の知る男性の中で、ドラッグ中毒でもなく、刑務所に入ってもいない唯一の男性は、ピザの配達員だけなんですから」と。

子どもや若者は、自分が知りうる範囲でトップの人を目指すものです。だから子どもたちが、もっと高みを目指せるような環境づくりをしてあげることが大切だと思います。そうやってみんなの可能性を広げること。それこそが『サードドア』のミッションだと私は思っています。

次ページ会場からはこんな質問が…
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