ビル・ゲイツという男はここまで徹底している Netflixのオリジナル番組にその執念を見た

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筆者は、配信から2日間でこの3パートを2回見た。そして、ある結論に至った。「これまでビル・ゲイツという人物を大きく勘違いしていたのかもしれない」と。

筆者はアップルが好きでスティーブ・ジョブズに傾倒しているせいもあるだろう。マイクロソフトのビル・ゲイツはビジネスライクなビジネスマンだと勝手に思っていた。学生時代には『ビル・ゲイツ未来を語る』(アスキー出版)を読んだこともあるが、心に響くほどではなかった。

彼が創設したマイクロソフトがブームを起こしたWindows95が発売されたときも「しょせんアップルOSのパクリ」と思っていたが、この番組をみて、それが大きな間違いであることがわかった。

彼は生粋の分析家でプログラマー。さらに問題解決のプロである。

筆者は彼の財団の仕事をほとんど知らなかった。金持ちの道楽や税金対策だと単純に思っていたが、それは大きな間違いだった。筆者の思い違いというか、情報を正確に捉えていなかったのだ。そもそもそんな機会があまりなかった。

ビル・ゲイツの素顔

この番組でわかったのだが、ビル・ゲイツは自らの頭脳と時間を懸命に使い、問題を解決しようと必死である。「天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する」は、その手法や考え方が克明に描かれているドキュメンタリーなのだ。

あとは彼の生い立ちも初めて知った。母親との確執や最終的には母への大きな愛情も肌で感じられる。彼の妻であるメリンダ・ゲイツの活躍も初めて映像で観ることができた。実に聡明で理想を実現するために精力を注いでいる。そしてメリンダ・ゲイツの目線からの夫婦の価値観も実に興味深い。

2人が抱えていた問題も赤裸々に描かれている。これは女性にもぜひとも見てもらいたい側面だ。筆者も女性の気持ちがわからないほうの人間だ。だからこそ感じることがある。

ビル・ゲイツの姉妹なども出演しており、ビル・ゲイツという天才がいかにして作られたのか、そしてその時々に何を感じたのかが立体的に見える。

ビル・ゲイツ夫妻が肌で感じているのは、生まれてきた場所が違うだけで、死にゆく命があるということに対する憤りだ。不衛生問題とポリオはそれを肌で実感させられる。ビル・ゲイツ自ら汚水から抽出した水を飲むシーンには驚かされた。よくある政治家のポーズとは違う。

このドキュメンタリーで実感したのは、ビル・ゲイツは、本当に困難に立ち向かうのが好きだということ。「問題をどうやって解決して行くのか」「頭脳明晰な彼はどう考えるのか」。そのプロセスは、ビジネスにも非常に有効だ。

たぶん、マイクロソフトでも同じような手法で問題解決をしてきたのだろうと思う。その速度が財団ではちょっと遅いと感じているのだろう。そこがプログラミングとは違う現実社会の難しさだ。

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