千葉の停電、復旧を阻む「真因」は何なのか 荒廃した山林の倒木が電線を切断、難工事に

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今回、東電による停電の復旧見通し時期は二転三転し、停電発生から2週間以上に延びた。倒木の撤去に想像を絶する労力がかかっているためだ。

停電多発の背景には山林の荒廃がある。とりわけ重要な平時からの整備がなされず、手入れのされていない山林が目立つ。

電柱が立っている場所については、地権者との間で3年ごとに契約更新手続きがある。更新手続きがあれば、地権者の状況を確認でき、周辺の樹木の手入れも行き届きやすい。

だが、電柱の間を結ぶ土地については所有者の把握が難しく、災害が起こるたびに復旧作業の難しさが顕在化する。

倒木が多発した千葉県に特有の事情

防災対策に詳しいある大手電力関係者によれば、「電力会社の復旧作業は、高所作業車など工事車両による作業が主だ。大規模災害時は電力会社が所有していない大型重機で道路を切り開く必要がある。その手配により、復旧時間が左右される。そのため、自治体や建設業界、森林組合などとは平時から意思疎通を図り、地域防災訓練への参加など、緊急時対応の準備をしている」という。

早期復旧するために、日頃からどんな準備をしていたのか、今後、検証のテーマとなりそうだ。

今回の台風では、風速50メートル以上という過去にない強風が吹いたことで、おびただしい数の倒木が発生した。さらに千葉県特有の事情として、「サンブスギ」(山武杉)の倒壊も目立った。サンブスギについては、腐朽菌による溝腐れ病(正式名称は「スギ非赤枯性溝腐病」)が広範囲に及んでおり、台風をきっかけに幹が真っ二つに折れる現象が相次いだ。

「溝腐れ病による倒木は、里山など生活空間に近いところで多く発生しており、電線にかかったりして停電復旧のさまたげになっている」(千葉大学大学院園芸学研究科の小林達明教授)

今回の大規模停電には、「山林の手入れがおろそかになっていることが大きく影響している」(小林教授)。気候変動の激化で台風の威力が増す中、私たち電力のユーザーは、国土保全の大切さを改めて思い知らされている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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