スノーピークがアメリカ市場に本腰の理由 社長が米移住、「売上高500億円」目標の本気度
――山井社長は現在、59歳。なぜ社長自ら、アメリカに住居を移して市場開拓に乗り出したのでしょう。
2014年に東証マザーズに上場し、住居やオフィス向け商品の販売など、日本国内での新規事業の立ち上げに注力していたので、2012年から5年ほど、アメリカに行っていなかった。それが一昨年から2年連続でアメリカに行く機会があり、改めてポートランドの環境に触れたのが大きかった。

もともと、40代の頃から「60歳になったら社長を辞める」と言い続けてきた。70歳、80歳まで社長として先頭に立ち続けたら、(会社が)ダメになると考えているからだ。自分の人生を考えると、60歳で社長を辞任して健康年齢が70歳とすると、たった10年しか世界中をキャンプしながら釣り歩くことができない。
それがポートランドに滞在して「アメリカに移住したら、自分の望む生活と会社の世代交代が両立できるのではないか」という考えに変わった。ポートランドの当社社員は、朝7時に出社して昼3時ごろには退社する。仕事を3時に終えて夜9時まで6時間、釣りを楽しむことができる。
創業家の人間は3代続けて起業家精神を持つ
今後のスノーピークを考えると、何としてでもアメリカ事業を大きくし、グローバルなブランドにしなければならない。動き始めたら、この体制を支えるCFOとCOOも決まった。
――今年1月には、娘である山井梨沙氏が副社長に就任しています。
父親が金物問屋として創業し、釣り具と登山用品を作っていた会社に入社し、僕が社内起業してキャンプ用品という新しい事業を立ち上げた。梨沙も2012年にスノーピークに入社し、新しくアパレル部門を立ち上げた。
新規事業の立ち上げは社員の誰もがやろうと思えばできるが、僕の世代では僕だけ、梨沙の世代では梨沙だけが社内起業した。たまたま山井家の人間が3代続いて起業(家)精神を持っていた。
キャンプ用品は登山用品に近いが、アパレルはまったく異なる分野。(これまでとは)違った感性が必要な新規事業を、入社7年で売上高20億円にまで育てたことを評価している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら