スノーピークがアメリカ市場に本腰の理由 社長が米移住、「売上高500億円」目標の本気度

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父(の幸雄氏)は、当時の登山や釣り道具に不満を持ち、自らが使いたい道具をデザインした。僕も自らが使いたいキャンプの道具をプロダクトデザインしてきた。そして梨沙も、同じ心持ちでアパレルのデザインをやっている。

そういう意味でスノーピークは、アウトドアのメーカーというより、人と自然をつなぐデザインをする会社に近い。

22年間続けてきたキャンプイベント

――1980年代終わりからのオートキャンプブームは1990年代後半に入ると一気に冷め、それにつれてスノーピークの業績も低迷したことがあります。今回のブームに不安要素はありませんか。

1980年代中盤までアウトドアと登山はほぼ同じ意味で、登山以外のアウトドアが根付いたのがオートキャンプからだった。それが2000年以降は一過性のブームではなく、時代とともに人間性の回復や癒やしが必要とされ、年々オートキャンプ参加人口が増えていると感じている。

スノーピークは、減収が続いていた1998年から全部門のスタッフが参加して、キャンプをしながら顧客の生の声を聴くキャンプイベント「スノーピークウェイ」を22年間続けている。利用者のニーズをくみ取りながら顧客とともに市場を作り、着実にキャンプ文化が定着する活動を続けてきた。

力を入れている「LOCAL TOURISM」などの体験型事業も、外からみればやみくもに事業を広げているように見えるかもしれないが、根底にあるのは「キャンプの力」。まったく軸はぶれていない。高度な文明社会へと日本が進む限り、キャンプの癒やしの力を使ったスノーピークの事業基盤は堅いと考えている。

中原 美絵子 フリーライター

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なかはら みえこ / Mieko Nakahara

金融業界を経て、2003年から2022年3月まで東洋経済新報社の契約記者として『会社四季報』『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』等で執筆、編集。契約記者中は、放送、広告、音楽、スポーツアパレル業界など担当。

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