マツダは世界一の高圧縮比14.0を実現したガソリンエンジン「スカイアクティブG」と、世界一の低圧縮比14.0を実現したディーゼルエンジン「スカイアクティブD」を市場導入済みだが、各々のエンジンには一長一短が存在する。そこに風穴を開けるのがガソリンエンジンとディーゼルエンジンのいいとこ取りの特性を持つ、ガソリンエンジンの圧縮着火(Compression Ignition)である。
圧縮着火の課題を独自技術で克服
これまで世界の自動車メーカーが開発を進めてきたが、実用化レベルには辿りついていなかった。しかし、マツダは圧縮着火の課題を独自技術で克服し、世界で初めて実用化に成功した。それが今回紹介する「スカイアクティブX」である。
そもそもガソリンエンジンの圧縮着火は何が優れているのか。これまで100年以上にわたる内燃機関の進化を要約すると、同じ燃料を用いて燃焼させた時に、どれだけ大きな仕事をさせられるか……。つまり「熱効率を高める事」だった。では、熱効率を上げるにはどうしたらいいのか。それは「圧縮比を上げる」、「比熱比を上げる」の2点である。
マツダはすでにガソリンのスカイアクティブGで世界一の圧縮比14.0を実現しているが、さらに比熱比を上げるには燃料に対する空気の比率を大きくする(=リーンバーン)ことが有効となる。
比熱比を上げるために、これまでさまざまなリーンバーンエンジンが世に出たが、どれも言うほどの効果がなかった。その理由はスパークプラグによる火花点火だったためだ。燃料が薄いと着火させるのも燃え広がらせるのも難しい事である。
それを解決するにはガソリンを軽油のように圧縮着火させる事だった。なれが可能となれば、理論空燃費を遥かに超える薄さ(=スーパーリーンバーン)でも燃焼が可能。これがガソリンの圧縮着火エンジンが「究極の内燃機関」と呼ばれるゆえんだ。
では、マツダはなぜ圧縮着火エンジンをモノにすることができたのか。これまでガソリンの圧縮着火の実用化への高いハードルは「燃焼可能な回転・負荷の狭さ」と「圧縮着火/火花着火の切り替え」である。これを可能にしたのは、「圧縮着火にはスパークプラグは不要」、「燃焼方式の切り替えが難しいなら、その切り替えその物を無くす」といった逆転の発想……ブレイクスルーだった。
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