斎藤工が「芸人・永野」に尊敬の念を抱く理由 他の人ができないことをやるのが永野の魅力

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永野:それに対する反逆心はありますね。そうじゃないぞ、と。なんか、芸能人って基本的に前向きな発言をしなきゃいけないじゃないですか。でも、僕はさっきの仕事でメイクさんに「怪我をしてからうつなんだよね」っていう話でめっちゃ盛り上がったんです。メイクさんも「こいつを何とか支えてやろう」みたいな感じになっていて。なんか今は「うつ」とか気軽に言えない空気があるじゃないですか。

でも、『MANRIKI』もそういう映画なんですけど「思ったときに言えばいいじゃん」って。そういう感覚を大事にしたいな、というのはありますね。マシーン的にお笑いができる人はプロとしてすばらしいんですけど、僕はもうちょっと生々しいところもあるので。

例えば、テレビの収録で「私、ブスです」みたいな感じで、イジってほしそうな女性のタレントさんがいて。ほかの芸人は「お前、ダメだな」みたいなことを言ってイジるんですけど、僕は普通に「でも、この人めちゃくちゃかわいくない?」っていう顔をしてしまって、発言できなくなることがあるんです(笑)。性欲が勝つ瞬間があるですよね。なんか、そういうのって面白くないですか?

――面白いですね。

永野:別に工くんがそうだとは言ってないですけどね(笑)。

――斎藤さん、どう思いますか?

「永野さんに憧れちゃった」

斎藤:永野さんも本当に映画がお好きな方なんですけど、僕が映画に求めるものはそこに近いかもしれない。僕は、テレビというマジョリティーが見ているであろう大衆的なメディアではできないことをやらないと映画じゃないと思うし、そうでなければ映画館まで足を運ばないんです。

そういう中で、永野さんのエッセンスは僕の好きな映画っぽいところはあります。それはメジャーかインディーズかということじゃなくて、ほかではできないことをしっかりやっている人に憧れがあるんだと思います。

だから、「天才チンパンジーまもるくん」を見たときから、僕はたぶん永野さんに憧れちゃったんです。いわゆる芸人さんがお客さんを笑わせたいと思っている感情とは全然違う角度だったんです。脱糞をしに来た、みたいな(笑)。

――死体が脱糞を。

斎藤:死後硬直からの。

永野:死後硬直からのニューッて。「からの~」じゃないですよ。そこは普通に芸人っぽいな、っていう(笑)。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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