復調パナソニックが上方修正"しない"理由 第3四半期は高進捗だが、通期計画は据え置き

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だが、別の角度から820億円の増益幅を分析すると、人件費など固定費圧縮の効果が500億円と、大半を占めていることがわかる。決算会見で河井常務が強調した「できるだけ前倒し」で進めた構造改革の効果といえる。

「最優先事項は赤字事業の止血」。津賀一宏社長がそう繰り返してきたように、パナソニックは今年度、課題事業のリストラに傾注してきた。

昨秋以降、不振の個人向けスマートフォン、プラズマパネルの生産中止を相次いで発表。赤字の半導体事業も、生産の前工程を担う国内工場の合理化に向けて岡山工場を閉鎖し、北陸の3工場を外資との合弁会社に移管することを決めた。

さらに半導体事業では、第3四半期決算の発表と同時に、海外の3工場をシンガポールの半導体メーカーに売却することを発表。「(不採算の)回路基板の改革は第3四半期に実施した。第4四半期には半導体(の構造改革)をしなければならない」(河井常務)。

構造改革費用を積み増し

構造改革には当然、希望退職の募集に伴う一時金や、拠点再編の費用がかさむ。パナソニックは中計で掲げた2014年度までの赤字事業の止血に向け、2年間で2500億円という構造改革費用を準備。うち1500億円を今年度に充当すると当初説明していた。

しかし、第2四半期決算の発表時に、1700億円に積み増すと表明。今回の決算発表時には、「1700億円よりもう少し増える」(河井常務)と、さらに積み増しする見通しを示した。構造改革費用の多くは、第4四半期の営業外費用に計上される見通し。ただ一部は「在庫評価損が出るので、営業利益の中に入ってくるものもある」(河井常務)。その分、通期の利益は下押しされることになる。

赤字事業の改善を、早いうちにやりきる――。パナソニックの通期計画据え置きは、そうした構造改革前倒しに向けた覚悟の表れといえる。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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