聞こえる言葉が理解できない人が直面する危険 APD・聴覚情報処理障害を知っていますか

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普段から言葉を聞き取れないことが多く、聞こえの悪さは自覚していたものの、仕事はそこそこできていたというAさん。しかし、定期的に会議があり、その会議録を交替でとることになって以降、その順番がまわってくると、次々と展開していく議論についていけなくなってしまったと言います。議論が白熱してくると、参加者たちの声も大きくなりスピードも速くなります。

そうすると、もはや会議録をまったくとることができなくなってしまいました。APDの患者さんは、複数の人が同時に話をすると、誰の発言かもわからなくなってしまう傾向があります。

多くの耳鼻科医には知られていない

仕事中にまわりの人の話がよく聞き取れないことが続いていたJさんは、上司から、耳が悪いから耳鼻科で調べてもらえと言われました。このため、意を決して近くの耳鼻科に行きました。聴力検査を行うと、「聴力はまったく正常です」と医師に言われました。

「まわりの人の声が本当によく聞こえないのです」。何度説明しても、「聴力には異常がないから、そんなことはないはずだ」と言われるばかりです。最後には、「頭がおかしいから、精神科で診てもらったほうがいい」とまで言われてしまいました。Jさんの訴えは切実です。

APDに対する知識さえあれば、聴力検査で異常がなくても、これはAPDだと容易に推測することができます。しかし、まだまだ一部の耳鼻科医にしかAPDの存在が知られていない現実があります。耳鼻科医の中では、聞こえないというのは、聴覚系に問題があり、難聴があるものだという先入観があるため、Jさんのように検査の結果が正常だと、このような冷たい対応をしてしまうのでしょう。

フィッシャーの聴覚情報処理チェックリストを一部改変したもの。「チェックがつかなかった個数」に、4%を掛けて72%を下回ると、APDである可能性が高い。(画像:あさ出版提供)
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