『経営参加への近道とは…』(30歳男性) 城繁幸の非エリートキャリア相談
終身雇用の崩壊、成果主義の導入などにより、日本人の「働き方」は激変。その結果、自身のキャリアに迷えるビジネスパーソンは増えていくばかりだ。これまでの古い「昭和的価値観」から抜けだし、新たな「平成的価値観」を身に付けるためにどうすればいいのか。日本の人事制度を知り尽くした城繁幸氏が、あなたの悩みにお答えします。
CASE:11
『経営参加への近道とは…』(30歳男性)
<相談者の悩み>
はじめまして、連載を興味深く読ませて頂いています。
私の質問は一言で言うと、「将来事業戦略/経営企画の仕事に自分を売り込む為の武器を、仕事現場から得るか学問/資格から得るか?」です。
私の新卒以降の経歴は、
99年:専門商社 財務部門配属(外国為替業務担当)
01年:コンピュータネットワーク SIer 新事業開発部門へ転職
04年:MBA取得のため退社後 米国へ留学
06年:MBA取得後、日系企業の米国支社入社 Sales & Marketing アナリスト として現在に至る。
現在30歳の私は米国内で働いていますが、今後の事業戦略業務でのキャリアプランとビザの問題などを考え、近く日本に戻り再就職するつもりでいます。
大会社でプロジェクトの一部に終始するよりも、小さな会社でも会社全体を動かしていく仕事を求めています。そのために遅くとも5年以内には、メーカーあるいは流通分野の会社で事業戦略/経営企画の仕事に就きたいと考えていますが、現時点でその仕事に必要な経験/専門性が十分にないと考えています。
事業戦略/経営企画仕事に必要な経験/専門性は、ズバリ経理だと考えています。つまり、本当の目的地である事業戦略/経営企画にたどり着く前に、経理というワンステップ(それ自体自分に必要なものであり関心も持っていますが)を踏むキャリアプランを考えています。そこで、経理の知識/スキルを得る為に、二つの選択肢で迷っています。
(1)米国でAccountingの修士課程を1年かけて取る。同時にCPAも取得する。その後日本で経理部門へ就職、あるいはダイレクトに事業戦略の仕事に就く。
(2)今、日本に戻り、経理部門に就職し現場から知識/スキルを得る。
(1)の場合、大学院の学位やCPAの資格など、”形のある”ものを武器とすることができる反面、実戦経験のなさは変わりません。さらに、自分の全体的な経歴を見たとき、既にMBAのため2年間キャリアに穴を開けており、さらに最低1年穴を開けることになります。また、転職に際して日本では米国に比べアカデミックな部分への評価が少なく、実経験が重視されるように感じています。
(2)の場合、そもそも私のここまでの経歴と年齢で経理部門への転職が可能かという疑問があります。事業戦略や経営企画の仕事は、普通別部門である程度の仕事経験を経てから移っていく人が多いと思いますが、経理となると新卒から経理畑というのが、日米とも一般的であるように思います。
いずれの道を行くとしても、経理の実経験を持つために一旦経理部門への就職が必要になると考えていますが、問題は(1)のプロセスを経てからが良いか、今すぐが良いかです。
現在30歳という年齢で、全く未経験の経理の仕事を求めること自体が難しいのは理解しているつもりですが、この先長い仕事人生を考え、今チャレンジすべきと考えています。また、自分自身はまだまだ新しいことを吸収できると考えています。
ついては、この2つの選択肢でそれぞれのメリット・デメリットをアドバイス頂ければ幸いです。