MMTが「こんなに誤解される理由」を考えてみた 政権を取れるのか「受難の経済学」今後の論点

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日本やユーロはMMTでデフレ懸念を払拭できるか

通常であれば、金利が十分に低ければ景気回復に向かう。だが、日本やユーロでは政策金利はほぼゼロの水準になって久しいが、景気回復は十分とは言いがたい。政策金利をゼロ以下に下げるのは(不可能ではないが)なかなか難しいのが現状で、金融政策の限界がまずはここに存在する。

この状態では、経済は“罠”に落ちたように不調から脱出しにくくなってしまう。これがいわゆる「流動性の罠」(liquidity trap)と呼ばれる状態で、低インフレが常態化すればデフレへの懸念を高めてしまう。

それへの処方箋として昨今、主流派左派から積極的な財政出動が提案されている。MMTはもとより積極財政を肯定する立場であり、つまりゼロ金利制約下、低インフレ下においては、主流派左派とMMT派の施策的な結論はかなり近い。このテーマでの議論はむしろ「MMT派+主流派左派」陣営と「主流派右派」陣営の間でクリティカルになるだろう(反緊縮派vs.緊縮派)。

世界にも目を向けるべき

MMT陣営は政権を取れるか

MMT派のステファニー・ケルトンが参謀に就いたバーニー・サンダース候補と、ミレニアル世代の世論に注目したい。また、ツイッターを駆使するトランプ大統領にインスタグラムで対抗しうるAOCの動向にも注目しておこう。

そして、世界に視野を広げれば、各国の「反グローバリズム」勢力の拡大は、世論のMMT支持の潜在的なバロメーターになるだろう。

佐々木 一寿 経済評論家、作家

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ささき かずとし / Kazutoshi Sasaki

横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業、大手メディアグループの経済系・報道系記者・編集者、ビジネス・スクール研究員/出版局編集委員、民間企業研究所にて経済学、経営学、社会学、心理学、行動科学の研究に従事。著書に『経済学的にありえない。』(日本経済新聞出版社刊)などがある。

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