MMTが「こんなに誤解される理由」を考えてみた 政権を取れるのか「受難の経済学」今後の論点
MMTは財政支出の財源としての税金は必ずしも必要ないと主張している。
ただ、それでも税金は必要で、それは自国の貨幣がその国の納税時に必要となるから、流通貨幣としての効力が(貴金属に裏付けられなくても)生じると説明する(「租税が貨幣を動かす」という主張)。
また、税は、基本的に好ましくない現象を減速させるための「マイナスのインセンティブ」として用いるべきと主張する(例えば炭素税など)。
そもそもハイパーインフレは、内乱等の極度の社会的混乱や、供給サイドが極端に壊滅した場合でなければ起こらない経済現象だ。
ステファニー・ケルトンは来日講演で、財政政策に関し、財政予算制約からインフレ率制約への転換を提案している。つまり、MMTはインフレ率に従うのが基本姿勢で、仮にインフレ率が上がりすぎれば財政支出の削減や増税等で対応する方針を持っている。
MMT反対派の4パターン
財務省の資料では経済学界の重鎮による批判や疑問が紹介されている。
一部を以下に挙げると、ポール・クルーグマン(ニューヨーク州立大学、経済学者)、ジェローム・パウエル(FRB議長)、ロバート・シラー(イェール大学、経済学者)、アラン・グリーンスパン(元FRB議長) 、ローレンス・サマーズ(元アメリカ財務長官)、ケネス・ロゴフ(ハーバード大学、経済学者)、オリヴィエ・ブランシャール(元IMFチーフエコノミスト)、ジャネット・イエレン(前FRB議長)、クリスティーヌ・ラガルド(IMF専務理事)などだ(「わが国財政の現状等について 平成31年4月17日」P57〜59参照)。
ランダル・レイの著書によれば、「MMTに対する反応の典型的な4段階」というものがあり、多くの関係者は、①不信「クレイジーだ!」、②恐怖「ジンバブエだ! ワイマールだ!」、③義憤「お前たちは、我々の経済を破壊する!」、④激怒「お前たちは、不潔で、左翼で、共産主義のファシストだ!」という順番で表れるという。
そのような状況のなかでも、MMTに好意的な主流派もいる。サイモン・レン・ルイス(オックスフォード大学教授、イギリス労働党経済顧問委員会委員)は、MMTの結論は標準的なマクロ経済理論から導かれるものに近いと理解を示している。
ポール・クルーグマンはMMTへの批判の急先鋒のように扱われるが、理論家ゆえ理論面の詳細は譲れないとしても、財政出動重視(反緊縮)の姿勢には理解を示すところも見せている(アメリカ議会での「MMT非難決議」提案に対して抗議している)。
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