MMTが「こんなに誤解される理由」を考えてみた 政権を取れるのか「受難の経済学」今後の論点
主権通貨を発行する国はその国の通貨建て債務がいくら増えても(非自発的には)デフォルトしないと主張。このことは主流派も同意する事実である。
ただ、事実としてそうだからといって、国債や貨幣をいくらでも発行すべきとはMMTは主張していない。MMTは主にインフレによる制約があり、過度のインフレにならないように財政支出をコントロールしながら社会厚生を充実させることが重要と主張する。
アレクサンドリア・オカシオ・コルテス(AOC)が2019年1月、MMTに好意を表明して一般的に認知が広がったのは事実だ(現在、公式な支持は表明していない模様)。
主唱者の1人である『MMT現代貨幣理論入門』著者のランダル・レイは、MMTの理論自体は中立的なものだと述べている。
ただ、経済格差是正への施策可能性を含むため、左派の政治家がMMTの理論に依拠しようとする場合がある(例えば、アメリカの民主党議員バーニー・サンダースの国民皆保険、大学教育無償化等)。政府予算均衡にこだわらなくてもよければ、格差是正政策のための財源確保の議論は回避できるからだ。
また極論すれば、共和党のドナルド・トランプ陣営も「壁」等の財源としてMMTを利用可能である。
国民のためのMMT
レイは真っ向から否定、MMTは、国の主役は国民と考え、国民のために国家がなるべく多くの厚生的なことを財政で行うべき(機能的財政論)と考えているようだ。例えばJGP(ジョブ・ギャランティ・プログラム。政府による就業保証)などで完全雇用を目指しているが、国有化は目指していない。
かたや主流派の右派は、国家の支配的側面を強調し(”ビッグ・ブラザー”幻想)、国家の介入を嫌う傾向にあり、MMTの機能的財政論を警戒、非難している。
教育無償化、国民皆保険等の社会保障政策実施を掲げるアメリカの政治家が台頭、「民主社会主義者」と名乗り、アメリカのミレニアル世代の支持拡大が起きているというのも事実だ。
実はアメリカにおける社会主義化は歴史上、目新しいことではなく、戦前の不況期から1970年代のアメリカで行われ、その後スタグフレーションにより廃れた、いわゆる「ニューディール政策」がある。ニューディール政策推進者は「ニューディーラー」と呼ばれ、経済学上の分類では計画経済を標榜する社会主義者に近い存在だった。
主流派から見れば、国からの介入が多く「大きな政府」に見えることは事実で、「社会主義者」と呼びたくなるのも道理だろう。ただ、北欧などと比べれば、まだまだ自由主義寄りのポジションとはいえる。
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