中国の鉄鋼市況が世界に先駆けて底打ち、反発はホンモノ?
「まだら模様」とはこのことをいうのだろう。中国の鋼材市場は今、強気、弱気の見方が目まぐるしく飛び交う、先行きの見えない展開が続いている。
「4兆元の景気刺激策への期待から、建材の需要は確実に高まってきた。年末ですでに底は打っている」。ある鉄鋼商社幹部の見方は極めて楽観的だ。一方、別の商社の中国担当幹部は「キャンセル騒ぎには縁がないと思っていた造船用厚板でも、中国品がダブつき始めている。発注規模が大きいので、すぐに数十万トン規模の在庫になりかねない。まだまだ厳しい状況が続くだろう」と不安を口にする。
担当者が見ている鋼材の品種や地域によって、まったく見え方が異なってしまう。それが、中国の鋼材市場の現状だ。
昨年の前半までは、まったく様相が異なっていた。前半はほとんどの品種、地域で生産、価格とも右肩上がりに高騰。北京五輪を間近に控え、大都市圏を中心として建設ラッシュが巻き起こっていたためだ。
投機資金が絡む形で、ショッピングモールやマンションが雨後のたけのこのように建てられ、鋼材需要が急増。右肩上がりの価格上昇が続くとの錯覚も生まれ、ついには素人までもが鋼材取引に参入するほど過熱。さまざまなツテを経由して、日本の鉄鋼商社にも買いのオーダーが殺到するほどだった。
しかし、実態はバブルだった。「真水だと100トン程度の引き合いが、日本に来るときには1000トンになってメーカーにバラまかれていた」(商社筋)。実は、2008年の年頭には、主要都市の住宅販売価格指数はピークを打ち、徐々にその勢いが衰え始めていた。北京五輪の喧噪が実需の弱まりを見えにくくし、そのことがバブル相場を長引かせた。
7月以降、鋼材見かけ消費は急減した(下グラフ参照)。にもかかわらず、環境規制のあった北京周辺の鉄鋼メーカーを除けば、大手各社は夏場も高生産を維持。荷動きが急速に鈍り在庫が積み上がる事態となった。秋口にかけて鋼材価格が急降下したのは、そのためである。