孤立する石破氏、遠ざかる「ポスト安倍」への道 締め付け強まれば「石破離れ」の可能性も

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首相が4選を狙わずに任期満了を迎えれば、次期総裁選は2021年9月実施となる。その場合、石破氏が頼りにするのは、昨年の総裁選で半数が石破氏支持に回った竹下派だが、同派では茂木敏充経済再生相や加藤勝信総務会長がポスト安倍に意欲を示しており、「次回総裁選での石破支持は期待できない」(石破派幹部)のが実情だ。

前回総裁選で石破氏の得た国会議員票は73票にとどまっており、それから竹下派の支持グループが抜ければ「基礎票はさらに減る」(同)ことにもなりかねない。

岸田氏が要職に起用されれば、石破氏は窮地に

党内有力議員の中で、総裁選で2回連続で「石破票」を投じたのが小泉氏だ。このため、石破派は「次回も小泉氏が支持表明してくれれば議員票も増える」と期待する。

しかし、小泉氏は滝川クリステルさんとの結婚を真っ先に菅義偉官房長官に報告したことで、「官邸にすり寄った」(自民幹部)との見方も広がる。小泉氏が頼った菅氏は、今やポスト安倍の最有力候補で、石破氏のライバルだ。小泉氏が菅陣営に加われば、石破氏の総裁選戦略はさらに苦しくなる。

最新の世論調査の「次の首相にふさわしいのは誰か」との設問では、小泉氏が断然トップの29%。安倍首相が18%で続き、石破氏は13%で3位だ。菅氏と河野太郎外相は6%で並び、首相からの禅譲説もある岸田文雄氏は1%と低迷している。

この結果を見る限り、首相と小泉氏を除けば石破氏への国民的期待度は「ポスト安倍レースの1番手」をキープしているようにみえる。しかし、11日の人事で岸田氏が引き続き党・内閣の要職に起用されれば、状況が変わる可能性がある。しかも、退任後の院政のために、岸田氏への禅譲を狙って安倍首相が党内の多数派工作を進めれば、石破氏は一段と窮地に追い込まれる。

このため、派内からは「次回は岸田氏に譲って、次の次を目指しては」との弱気の声も出る。ただ、そうなると河野、小泉両氏の台頭などで「年齢的にも政治的にも過去の人」(別の閣僚経験者)となりかねない。党内の反安倍勢力の間には「安倍1強政権の歪みを正せるのは石破氏だけ」(閣僚経験者)との声もあるが、今後も首相主導の権力闘争が続く限り、石破氏が総理総裁への道を切り開くのは「至難の業」(自民長老)との見方が多い。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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