孤独死が30代の健康な人に突如起こりうる現実 離婚や激務で心身を崩せば一気に孤立する
年間約3万人と言われる孤独死――。
長年、孤独死の取材をしていると、その現場からは私たち社会が抱える大きな課題と現状が浮き彫りになる。今回は、30代の孤独死の現場から、私たちが生きる日本社会のリアルな現実を伝えたい。
特殊清掃人の上東 丙唆祥(じょうとう ひさよし)さんは、ある日、60代の女性から依頼の電話を受けた。
「部屋のモノをすべて処分してほしい」
関東某所のアパートの1室で、娘である30代の女性が孤独死したのだという。
女性が引きこもった原因は?
上東さんが現場に向かうと、そこは昭和時代に建てられた古びたアパートだった。女性は3カ月前から一人暮らしを始めたのだという。
玄関を開けるなり目についたのは、大手引っ越し会社の段ボール箱の山だった。6畳1Kのわずかなスペースは、段ボール箱でそのほとんどが埋まっていて、倉庫のようでまるで生活感がなかった。
1つしかない窓は雨戸でピッタリと閉め切られているため、部屋の電気をつけても、中は薄暗かった。上東さんが部屋の雨戸を上げると、日の光が入ってきて、一気に部屋の輪郭が浮き彫りになっていく。
しばらく段ボール箱に阻まれていたが、右横の押し入れの下段から、強烈な臭いがすることがわかった。どうやら女性が亡くなったのは押し入れらしい。段ボールを避けて、押し入れに歩みを進めると、下段には、シングルの布団が敷かれていて、そこには黒い体液が染みついていた。枕の横には、目覚まし時計とティシュボックスが置かれている。
段ボール箱を開けると、子どものおもちゃや絵本などが次々に出てきた。
「女性は、離婚後、この部屋に引っ越してきてわずか3カ月で亡くなったみたいです。仕事を探さなくてはと思っていたとは思うけれど、子どもと引き離されたことで、そんな気持ちにはなれずに結局、部屋に引きこもったんだと思う。子どもとの別れは本当に切ないよね」
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