ドイツに財政出動を期待してもダメなワケ

国民の借金嫌いに連立政権は不安定

メルケル首相の任期満了まで景気は保つか(写真:REUTERS/Bernadett Szabo)

欧州の景気牽引役であるドイツ経済に変調の兆しが広がっている。4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率が前期比マイナス0.1%に落ち込み、7~9月期入り後の月次指標が一段と悪化している。代表的な企業景況感を表すIfo指数は5カ月連続で低下し、過去の景気後退局面の水準に急接近している。米中貿易戦争の余波を受け、中国向け輸出依存度の高い製造業に大幅なブレーキが掛かっている。

良好な雇用・所得環境に支えられ、サービス業を始めとした内需部門の堅調もあり、今のところ本格的な景気後退局面入りは回避されている。だが、失業保険の受給者が過去4カ月のうち3カ月で前月から増加するなど、ここにきて雇用改善にもかげりがみられる。好景気と物価底入れを反映し、ここ数年は主要な労働組合が高めの賃上げで妥結してきた。そのため、賃金上昇率も高めの伸びが続いているが、企業の売り上げが伸び悩むなか、徐々に企業利益を圧迫し始めている。

ドイツ連邦銀行(中央銀行)は7~9月期も小幅なマイナス成長に陥った可能性があると指摘している。落ち込み自体は軽微ながら、2四半期連続のマイナス成長は便宜的に景気後退を意味する(これを一般にテクニカル・リセッションと呼ぶ)。景気後退となれば、2008~09年の世界的な金融・経済危機時以来となる。

財政出動を求める声は国民の間でも多数意見でない

こうしたなか、ドイツの財政出動待望論が日増しに高まっている。ドイツの一般政府の財政収支は2011年以来、欧州連合(EU)が加盟国に課すGDP比3%の赤字を下回り、2014年以降は財政黒字が定着している。2008~09年の危機時の財政出動や銀行救済でGDP比80%超に膨れ上がった公的債務残高も減少に転じており、今年はEUが高債務と定義する60%を下回る見通しだ。

長年の大規模金融緩和の継続で、金融政策の限界も見え隠れするなか、欧州域内で数少ない財政余力のあるドイツが緊縮路線を改めることに期待する声も多い。だが、伝統的に質素や倹約を美徳とするドイツでは他国以上に財政出動に対する警戒が強い。ドイツ語で「借金」を意味する言葉「Schuld」が「罪」という意味も持つことはギリシャ危機時にも話題となった。過去のハイパーインフレの悪夢や高齢化に対する危機意識の高さも、財政健全化に熱心な理由だ。

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