カルテル損失のみ込んだ海運決算の先行き 不透明要素は欧米の独禁当局

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独禁法には「リーニエンシー」と呼ばれる課徴金減免制度があり、公取委の調査開始前に自主的に違反行為を申告するなど調査に協力した企業は、課徴金の免除や減額を受けられる。商船三井は、自主申告によって課徴金減免制度の適用を受けたものとみられる。

もっとも、その商船三井はもちろん、巨額の特別損失を計上したはずの日本郵船や川崎汽船も、今第3四半期の決算に大きな影響は出ていない。今2013年度通期(2013年4月~2014年3月)の純利益見通しについて、日本郵船は300億円、川崎汽船は160億円という従来計画をそのまま据え置いた。カルテル課徴金がらみの損失はどこに消えたのか。

不定期船が健闘、特益計上も

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コンテナ船は運賃市況が低迷している

まず大きいのは、本業が持ち直しつつあることだ。「定期船」と呼ばれるコンテナ船については大型船の相次ぐ竣工で運賃市況が低迷し、3社とも部門赤字を免れない。が、バラ積み船、タンカー、自動車船など「不定期船」が大健闘している。

日本郵船の磯田裕治経営委員は、「最大の牽引役は不定期船。バラ積み船は大型から小型まで想定を上回る運賃市況となった。それ以上に大型原油船などタンカー系が大きく上振れた」と振り返る。自動車船も、「欧州向けに底入れ機運が出てきた。荷動きは全般に順調」(川崎汽船の吉田圭介専務)という。燃料油を節約する目的での減速航行の拡大や、燃料油高騰の一巡、為替の円安ドル高なども、各社の業績にはプラスに働いている。

今回、2013年度の営業利益見通しについて、日本郵船は30億円増額の450億円へと上方修正した一方、商船三井は70億円減額の430億円へ下方修正、川崎汽船は据え置きの280億円とまちまちだった。ただ、前期比では、日本郵船が2.6倍の増益、商船三井が大幅黒字化(前期は157億円の赤字)、川崎汽船が1.9倍の増益と、回復基調にあることは間違いない。

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